ヨガによる怪我の原因で多いのが、意外かもしれませんが、インストラクターによるアジャストメントによってです。これは私も経験したことがあって、アジャストしたのはベテラン・インストラクターで、多分数ミリ程度のアジャストだったと思うのですが、その数ミリが私の腰の限界を越えていたのでしょう。ピキッという感覚がして、数時間後には立ち上がるのが困難な状態になりました。その経験があるので、私は絶対に生徒さんの体に触れて動かす系のアジャストはしません。

ヨガのポーズの指示、今昔

いくつかのヨガのポーズのアライメントの指示で昔は正しいと思われていたものが、現在の解剖学や生体力学の見地から見て必ずしも正しくないと証明されている指示がいくつかあります。

たとえば、手を頭上に上げた状態で「肩甲骨を下げる」という指示とか、三角のポーズに入る時に上半身をスライドさせる(例えば上半身を右に骨盤は左に水平移動させる動き)とかです。なぜNGなのかは、別の機会に譲ります。

また、ある人には有効なポーズのキュー(指示)が体型の違う別の人に有効とは限りません。人によって脚や腕の長さは違うし、股関節や肩関節の形も違うからです。

間違ったアライメントを繰り返すことにより、まじめで熱心な人ほど怪我をします。大体、ヨガが楽しくなってきた頃に、痛みが襲ってきます。

私は幸か不幸か、もともとが足腰が頑丈な方ではないし、体も柔らかい方でもないし、若くもないため、アライメントの間違いが、割りと早く痛みという形で出るため、自分の体を通して学んだことも多かったです。そうでなければ、アライメントの指示に対して興味を持つことはなかったと思います。

たとえば、昔はギックリ腰をしたら、痛みが取れるまで安静にしていることが良策と考えられていたのが、今は3日以上の安静は逆効果と言われるようになりましたし、以前はコレステロールの高い人はバターよりマーガリンを食べることを推奨されていたのが、実はマーガリンは非常に体に悪いということがわかったり、というように昔の健康に関する非常識が新常識に変わることがよくあるのと同じで、ヨガのアライメントの指示も変わってきています。

ヨガ解剖学のおすすめ参考書

ヨガ・アナトミー(解剖学)で最もアメリカで有名な本がレズリー・カミノフとエイミー・マッシュー共著のYoga Anatomyです。ヨガインストラクターの書棚には、まず必ずあります。日本語の翻訳本も出ています。ポーズごとに、どの筋肉が使われているのかが図解されています。ヨガ解剖学のバイブル的な本です。初心者向けではありません。

初心者でも読める本としては、日本滞在中に本屋で見つけて買った「ヨガの解剖学」(中村尚人著)が、とてもよかったです。

 

ヨガによる怪我

ここで紹介するYoutube動画は、理学療法医のドクター Raza Awan氏による「ヨガによる怪我」に関する講演です。Raza氏は、スポーツによる怪我治療の専門家ですが、ヨガで体を痛めたという患者を何人も診てきて、なぜ体に良いと言われているヨガで、こんなにも怪我をするのだろうか、という疑問からリサーチを始め、2011年からヨガによる怪我を防ぐためのプログラムを提唱しています。

ごく簡単にですが要約します。

ヨガで体を痛める主な原因

ヨガの怪我の主な原因のひとつは、同じ動作を何度も繰り返す体の酷使によって起こることが多いです。特に、アシュタンガ ヴィニャーサで起こりやすい怪我です。しかしながら、ヨガが特別怪我をしやすいエクササイズというわけではなく、ジョギングでも70%の人が怪我をするし、バスケットボールでは、さらに怪我をする確立は高いです。

アシュタンガヨガでは、特に前屈によって怪我をする人が多いです。vc

ヨガで怪我をしやすい部位

ヨガの怪我について統計を取ったところ、ヨガで痛めてしまった体の部位の順位は、

40% 腰 症状は椎間板ヘルニア、坐骨神経痛。

【原因のポーズ】前屈のポーズを深めようとしてです。意外に思うかもしれませんが、怪我をしやすい人は体が堅い人ではなく、むしろ柔軟な人です。なぜなら柔軟な人は、限界を越えてポーズを深めるようにで無理をしてしまうからです。治るまでに何ヶ月もかかります。

20% 膝 軟骨断裂
15% 肩 【原因のポーズ】アームバランス
10% 首 【原因のポーズ】頭立ちのポーズ(Head stand)、肩立ちのポーズ(Shoulder stand)

ヨガで体を痛める人の20%がヨガ・インストラクターです。それは、大体、体の酷使によるものです。たとえば、週に6日、10キロのランニングをしたら故障につながると同じです。

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ヨガで体を痛めたポーズの順位

アシュタンガで体を痛めたポーズの順位は

30% 前屈
10% 後屈
10% ねじり
7%  アームバランス

怪我のリスクが高いヨガのポーズ

怪我のリスクが高いポーズは、鳩のポーズ、頭立ちのポーズ、アームバランス、腕を組む(アームバインド)、戦士のポーズ1、鶴のポーズ、肩立ちのポーズです。

他にも、二人の方がスピーチをしていますが(前に座っている他の二人)、彼らの話も非常に興味深いです。

Dianは、練習中毒でした。来る日も来る日も長時間練習をしていて、ある日、膝の痛みを感じるようになりました。当時、周りのヨギーにアドバイスを求めると、大抵「大丈夫。ヨガでは、よくあること」との答えが返ってきたそうです。膝の痛みには股関節を開くといいというアドバイスを受け、毎日、股関節の開きを練習して、かなり股関節が開くようになり、ようやくたゆまぬ訓練が実ったと思っていた矢先、突然、長い瞑想から立ち上がろうとしたところ、太ももがパンパンと実際に裂ける音がしたそうです。体の酷使と、昔は正しいと思われていた間違った体の使い方が原因でした。今は体を開きすぎないような筋肉をしっかりと使うヨガを教えているそうです。

Remskiは、結構有名なヨガ・インストラクターです。怪我と現在のヨガ文化に継承を鳴らしています。いろいろ面白いことを言ってますが、その中のひとつは、柔軟であることを誉めそやすヨガ・カルチャーが怪我の原因にもなっているということです。(同じ理由で、体が堅い人は劣等感を感じるという文化がある。)また痛みや体の堅い部分を、スピリチュアル、または心理的な問題と結びつけるような、知ったかぶりのインストラクターが、たくさんいることにも触れています。

日本では、わかりませんが、アメリカでは、これは、とってもアルアルです。まるで悟りを開いた人のように、やたらとスピリチュアルな言葉を散りばめるインストラクターであふれ返っています。


筆者ホーバン村松由美子

米・ニュージャージー州在住。1982年ハタヨガに出会う。1986年に渡米。RYT500 & Pre-Natal(マタニティ)& Prime of Life(シニア)ヨガインストラクター。