マインドフルネスの実践はとてもシンプルです。立ち止まり、呼吸をし、心を静めます。そして、自分自身の内側に戻り、どんな瞬間も「今ここ」を楽しむのです。ーーティク・ナット・ハン著 「沈黙 ノイズに満ちた世界における静寂の力」(Silence: The Power of Quiet in a World Full of Noise)より
瞑想にはストレスの軽減、集中力の向上、心のバランス回復など、多くの効果があります。ただ、瞑想と聞くと静かな部屋で長時間座るイメージを持ち、「自分には無理」と思う人も多いのではないでしょうか。しかし、瞑想は短時間でも十分に効果があることがわかっています。
さらに、わざわざ特別な場所や時間を用意しなくても、仕事や家事の合間、エレベーターを待つ時間や電車を待つ数分間を利用して、呼吸に意識を向けるだけで心を落ち着けることができます。
呼吸に意識を向けることの大切さ
呼吸は、私たちの体内で唯一、自分の意思でコントロールできるものです。心臓を止めたり動かしたりすることはできませんが、呼吸は意識的に変えることができます。呼吸は生まれた瞬間から最期の瞬間まで私たちとともにあり、生命を支える基本でもあります。さらに、呼吸を整えることで自律神経が安定し、リラックス効果が得られることが科学的にも証明されています。
短い時間でもできる瞑想の具体例
瞑想の本質は、長さではなく「今この瞬間」に意識を向けることです。たとえば以下のようなシチュエーションで、簡単にプチ瞑想を試してみましょう。
エレベーターが来るまでの間、イライラしてしまうことはありませんか?そんな時、目を閉じてゆったりと呼吸を数回します。息を吸うときに「今、空気が入ってくる」と感じ、吐くときに「今、体がリラックスしている」と気持ちが穏やかになります。エレベーターが思ったよりもずっと早く目の前に降りてくると感じられることでしょう。
信号待ちや電車を待つ間、背筋を軽く伸ばし、鼻からゆっくり息を吸い込みます。体が新鮮な空気で満たされるのを感じながら、次に口を少しすぼめて長く吐きます。周囲の喧騒が背景になり、自分の内側に静けさを見つけることができるでしょう。
なぜプチ瞑想がおすすめなのか?
リラックス効果
たった30秒でも1分でも、呼吸に意識を向けるだけで自律神経が整い、ストレスを軽減できます。次の行動への集中力も高まります。
「自分に戻る」感覚を得られる
日々の忙しさに追われていると、自分を見失いがちです。短い瞑想の時間が、自分をリセットし心のバランスを整えてくれます。
継続しやすい
隙間時間を利用するだけなので、特別な準備がいりません。無理なく続けられるのもプチ瞑想の魅力です。
今日からできる!プチ瞑想の3ステップ
ゆったり呼吸
鼻からゆっくり吸い、口を少しすぼめて長く細く吐きます。ロウソクの炎を消さずに揺らすようなイメージで行いましょう。
今の感覚に気づく
手や足の感覚、足裏が地面に触れる感覚、周囲の音など、目の前にあるものを意識します。周囲の音に意識を向ける場合には、まず一つの音を拾い意識を向け吸う呼吸し、次に最初の音に加えて、もう一つ別の音にも意識を向けて吸う呼吸、さらに3つ目の音を拾って呼吸を続けてみます。そうしている内に、音が背景となって行きます。そこから自分の内側に意識をそっと移すことで、自分の内側に静けさを見つけることができます。
思考を手放す
雑念が湧いてきたら、そのことに気づき、悪いと思わず、ただ気づく度に呼吸に意識を戻します。このようなプチ瞑想を何度も繰り返す内に、「雑念に気づく→呼吸する→今ここに心を置く。」という習慣ができ、たとえば過去の出来事を頭の中でグルグルと反芻したり、未来の不安に捉われてしまうネガティブ思考のループから解放されます。
小さな一歩が大きな変化を生む
瞑想は、特別なスキルや多くの時間を必要とするものではありません。ちょっとした隙間時間を利用して「心の深呼吸」を取り入れるだけで、日々のストレスが和らぎ、心が軽くなります。次にエレベーターや電車を待つとき、ぜひプチ瞑想を試してみてください。それが、日常を豊かにする第一歩になるはずです。
村松ホーバン由美子:日本ヨガメディカル協会公認講師&WEB編集責任者
E-RYT500、C-IAYT(国際ヨガセラピスト協会認定セラピスト)、介護予防指導士、米国シニアヨガ指導士、ムーブメントセラピー指導者、ORIGINAL STRENGHTH認定プロフェッショナル、日英通訳翻訳。埼玉県在住。
【担当講座】「解剖学② ヨガセラピー✖筋膜」「ヨガ✖ポリヴェーガル理論✖自律神経」「様々なポーズの軽減法」