後屈のポーズは単に腰をそらすことではない!
ヨーロッパには古代ローマの美しい弧を描くアーチ型橋が今も、そのままの姿で残っています。鉄骨もボルトもない時代の石の橋が何千年もの風雨にさらされ続けても残っている理由は、全ての石が絶妙な弧を描いて支え合い、正に曲線力学にかなっているからだそうです。
石の一つ一つがが椎骨、橋全体が脊柱と考えると、やっぱり美しいだけじゃなく、丈夫でヘルシーな後屈は、ゆるやかな弧を描いていなければならないとわかります。
腰の湾曲は35度
以下は数年前に受講したヨガ・アナトミーの第一人者レズリー・カミノフ氏の講義で学んだことです。(Yoga Anatomy 「最強のヨガレッスン」の筆者です。)
背柱は複数の椎骨からできています。首の部分が頚骨(7個)、胸の部分が胸骨(12個)、腰の部分が腰骨(5個)、そして骨盤部分の仙骨(5個の骨が癒着している)、退化したしっぽの尾骨(1個)です。英語だと上から、Cervical Spine, Thoracic Spine, Lumber Spine, Sacrum, Coccyx(Tail bone)です。
後屈(バックベンド/backbends)で使うのは頚骨、胸骨、腰骨で、無理のない後屈の最大値は、首75度、胸25度、腰35度で合計で135度になります。もちろん個人差も非常に大きいです。(私は、この数字を見て腰が案外曲がらないのだと驚きました。正確に言えば曲げるべきではないのだと驚きましした。)と、ここまでがカミノフ氏の講義内容です。
背骨を総動員
英語表現でIt takes a village(こどもを育てるには村人全員が参加する必要がある。)という表現がありますが、腰を痛めずに後屈をするには、It takes a village!首、胸、腰の骨、全部を最大限に活用する必要があるのです。その他にも背中やお尻の筋肉を強化したり、太ももの前の筋肉を緩めたりと、色々な要素も加わります。
ところが胸椎は、姿勢の悪さ、呼吸習慣、運動不足などにより動きが悪くなっている場合が多いです。胸椎の動きの悪い人が、らくだのポーズなどの深い後屈をしようとすると、結局、腰椎でそれを補おうとするために腰への負担が増します。
故D.K.S.アイアンガ氏は、若さを保つために何歳になっても後屈を毎日することが大切だと言っていましたが、それは正しいアライメントで行ってこその恩恵です。そうでなければ、腰痛の原因になるだけです。私も以前は後屈の後は、必ず腰痛が悪化していました。
胸椎をゆるめる
以下にいくつか、椅子やブロックを利用して胸椎をウォームアップする写真や動画を紹介します。
ブラジャーのラインにヨガブランケットがきます。
3分13秒 胸椎を一つ一つ、ゆるめるつもりでブランケットの位置を少しずつ上げて行くといいでしょう。
3分50秒 胸が突き出ないように、体の全面のあばら骨の下の部分をブランケットに向かって押し付けるようにしましょう。
Urdhva Dhanurasana with a Block and a Chair
椅子を使った上向きの弓のポーズ
32秒 ひじを締めて
1分9秒 ブランケットにお尻は乗っています。(お尻は浮いおらず、座っているということ。)そのためにブランケットを足したのです。
注 )上のポーズで、私の場合はお尻の下にブランケットではなくブロックを敷くとちょうど良い高さになりました。
椅子に浅く座り、肩甲骨の端が椅子の端にきます。首の力を抜きます。
足で壁を押して椅子をスライドさせ、万歳をします。
元に戻る時は、椅子をつかみ、足は膝の下。顎をひいて、息を吐きながら起き上がります。
注)いずれのポーズも、胸椎のアーチを意識して、腰はアーチしすぎないように注意しましょう。
ヨガブロックを利用する
ヨガブロックを二つ使います。 胸の下のブロックは、左右の肩甲骨の間、ブラの紐が当たる場所に下の角が来ます。 深い呼吸をしながら、じっくりと横になっているだけで(最低30秒)、ゆるんできます。
ヨガベルトを利用する
最後に、もう一つヨガベルトを利用して背中から肩を開く方法の動画が以下です。私は家にいる時は、数時間このような格好で過ごします。特に机に向かう時には、姿勢を正してくれます。ヨガのクラスでは、キャメルのポーズをする時に、このたすきがけの状態で、ベルトの両端をそれぞれの手に持って肘を曲げます(手は上向き。できるだけ胸の近くでベルトの両端を持ちます。)。そのまま、胸椎だけのアーチで後屈するつもりでベルトの両端を前方に引っ張っていきます。これ以上、行けないところまで来たら、ベルトとから手を離し足首や足を持ちます。ヨガベルトのない人は浴衣の紐などでやってみてください。
体の前面のウォームアップ
背骨のことばかり書いてきましたが、後屈では太ももの前の筋肉を伸ばすことも大切です。詳しく言うと大腿四頭筋(quadriceps)と股関節屈筋肉(hip-flexors)です。
英語だとキング・アーサーのポーズと言います。
- 壁にお尻を向けて四つんばい。
- 右膝を曲げて壁下の床に膝をつけます。
- 右の脛からつま先までを壁にくっつけます。
- 左足を踏み出します。(床に対して脛が90度になるまで。)
- 両手は膝の上に置き背筋をまっすに伸ばします。
これだけでも、結構太ももの伸びを感じます。余裕があれば手をまっすぐ上に伸ばします。
腰がそりがちになるのを防ぐため、尾骨を下げ下腹を引き込み引き上げます。みぞおちは突き出がちになるので、背中側に凹ませるような意識を持って防ぎます。背筋を伸ばし胸と肩を開きます。このポーズの後は、驚くほど「仰向けの英雄座」Sputa Virasanaが楽にできます。
肩と胸を開くウォームアップも忘れずに。
村松ホーバン由美子:日本ヨガメディカル協会公認講師&WEB編集責任者
E-RYT500、C-IAYT(国際ヨガセラピスト協会認定セラピスト)、介護予防指導士、米国シニアヨガ指導士、ムーブメントセラピー指導者、ORIGINAL STRENGHTH認定プロフェッショナル、日英通訳翻訳。埼玉県在住。
【担当講座】「解剖学② ヨガセラピー✖筋膜」「ヨガ✖ポリヴェーガル理論✖自律神経」「様々なポーズの軽減法」