

Movement Is Medicine
「運動は薬である(Exercise is Medicine)」――2007年にアメリカスポーツ医学会(ACSM)とアメリカ医師会(AMA)が始めた国際的キャンペーンから広まった言葉です。いまではこの活動は40カ国以上に広がり、世界中で「運動を処方する」取り組みが進んでいます。
最近では、この考えをさらに広げた「Movement is Medicine(動くことは薬だ)」という表現が高齢者ケア、リハビリ、フィットネス、公的機関の健康増進キャンペーンなどの分野で使われています。
運動がもたらす驚きの効果
デンマークの研究では、3500人以上の労働者に職場で週1時間の運動を導入したところ、痛みの軽減、体力向上、そして生産性の改善が確認されました。— Exercise is more than medicine (Sjøgaard et al., 2016, Journal of Sport and Health Science)
運動は「26種類の慢性疾患」に効く
運動はうつ病から癌、心血管疾患、糖尿病、骨粗しょう症に至るまで、26種類の慢性疾患に対して治療や症状緩和の効果を持つ。— Pedersen & Saltin, 2015 (Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports)
このレビュー研究は、運動が幅広い病気に対して「最も効果的な処方薬」になることを示しています。
1日15分で老化を遅らせる理由
「1日15分の適度な運動が、細胞の損傷を防ぎ、老化のプロセスを遅らせる可能性がある。」
— Harvard Medical School
ハーバード・メディカル・スクールによれば、ほんの15分の運動でも老化のスピードを緩める可能性があります。その理由は、運動が次のような働きをするからです。
- 酸化ストレスを減らす:活性酸素による細胞損傷を防ぐ
- テロメアを守る:染色体末端の“寿命のバロメーター”を維持
- 炎症を抑える:慢性的な炎症を和らげ、老化関連疾患を防ぐ
- ミトコンドリアを元気にする:細胞のエネルギー産生を改善
- 血流・代謝を改善する:心血管や代謝機能を整え、全身の若さを保つ
たとえ短時間でも、毎日の小さな積み重ねが「細胞レベルの若さ」に影響する可能性があるのです。
ヨガの可能性
セラピーやリハビリとしてのヨガは、単に体を動かすだけではありません。
- ゆったりとした呼吸
- 無理のないポーズ
- 自分の内側に気づく時間
こうした実践を通じて、自律神経を整え、ストレスを和らげ、心身の回復力を高めていきます。
また、自律神経がととのうと、体内の炎症を引き起こすストレスホルモン「コルチゾール」が減少することが研究で明らかになっています。実際に、ヨガの実践によってコルチゾール反応が低下したことを示す研究も数多く報告されています。
つまり「動くことは体にとっての薬」であり、さらに「ヨガは体と心の両方にとっての薬」なのです。
文責:Yumiko H. Muramatsu