PMS(月経前症候群)については多くの方がご存じだと思いますが、PMDD(月経前不快気分障害)をご存じの方は少ないのではないでしょうか?
ちなみにPMDDはPremenstrual dysphoric disorderの略でPMSはPremenstrual Syndromeの略です。
世界保健機構(WHO)によるPMDD(月経前不快気分障害)の定義は、以下です。
「月経開始数日前に始まり、月経開始後数日で改善し、月経開始後約1週間で最小限またはなくなる気分症状(抑うつ、イライラ)、身体症状(無気力、関節痛、過食)、または認知症状(集中困難、物忘れ)のパターン」
どれも、PMSと似た症状のようではありますが、PMSよりもずっと症状が重く生活に支障をきたすのがPMDDです。
アメリカの精神医学会では、既に1990年代にPMDD(月経前不快気分障害)がPMS(月経前症候群)とは別の疾患として区別されるようになりましたが、世界保健機関(WHO)WHOでは、2019年に国際疾病分類に追加されています。
アメリカの医療機関ランキングでしばしばトップランクしているCleaveland Clinicからの情報を以下に追記します。
【PMDDとは】月経前不快気分障害(PMDD)は、月経前症候群(PMS)のより深刻な症状です。月経周期ごとに、生理前の1~2週間に身体的・感情的な症状が現れます。PMSは腹部膨満感、頭痛、乳房圧痛を引き起こします。
PMDDでは、PMSの症状とともに、極度のイライラ、不安、抑うつがみられることがあります。これらの症状は生理開始後数日で改善しますが、生活に支障をきたすほど深刻になることもあります。PMDDは、生殖年齢の女性の最大10%に影響します。PMDDの症状が閉経まで続く人もいます。
【主な症状】
怒りやイライラ。
イライラする、圧倒される、緊張する。
不安やパニック発作。
うつ病や自殺願望。
集中力の低下。
疲労やエネルギー低下。
食欲不振、暴飲暴食、食欲の変化。
頭痛。
不眠症。
気分の落ち込み。
再びWHOの記載です。
20年にわたる実験的研究により、PMDDに関する科学的知見の主要な一部が以下のように明らかになった。
〇PMDD患者ではホルモンレベルとパターンは正常である。
〇PMDD患者は、生殖ホルモンのGABA作動性代謝物であるアロプレグナノロンに対する脳の反応に異常を示す。
〇PMDD患者の脳細胞は、ホルモン処理遺伝子の発現異常を示す。
〇PMDD患者は、月経周期にわたって脳のセロトニンとGABAシステムの機能に変化が見られる。
〇PMDDは、脳内のホルモンとその代謝産物の異常作用を標的とすることで治療できる: 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、PMDDにおけるセロトニン作動性の変化を是正し、最大75%の患者に有効であり、ホルモン代謝産物のレベルまたはGABA-A受容体との結合を低下させる新しい治療法は、初期の有望性を示している。
日本においては、職場でのPMSや月経困難症への配慮について、ようやく去年、おととしあたりから、話題に上がるようになりました。(今の朝ドラの主人公もPMSで苦しむ様子が描かれています。)それでも、まだまだ女性の月経に伴う苦痛への社会的な理解が進むには時間を要するのだと思います。
特に日本の社会では精神的健康問題や女性の生殖に関するオープンな議論が避けられがちで情報が共有されにくいという文化的な要因が、障壁になっているように思います。
では治療法はあるのでしょうか?実際にPMDDと診断された協会認定セラピストの五十嵐香耶さんのお話では、診療科をたらいまわしにされた末に、ようやく心療内科で診断がつき治療によって改善されたそうです。五十嵐さんは診断がつかずに苦しんだご経験から、現在PMDDやPMSの周知と症状を和らげるためのヨガの普及を進めていらっしゃいます。▶五十嵐香耶さんのホームページはこちら。
以下は再びCleaveland Clinicからの情報です。
PMDDを治療するために、医療従事者は1つ以上の治療法を勧めるかもしれません。
〇SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬で、脳のセロトニンレベルを管理します。SSRIの例としては、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチンHCIなどがあります。
〇ドロスピレノンやエチニルエストラジオールを含むホルモン性避妊薬。
〇特定の食品やカフェインを控えるなどの食生活の改善。ビタミンB-6やマグネシウムなどのビタミンも症状を軽減することがあります。
〇けいれん(月経困難症)、頭痛、乳房圧痛、その他の身体症状を緩和するための市販の鎮痛薬。
〇気分を改善するための定期的な運動。
〇深呼吸や瞑想などのストレス対処法。
薬を使わずにPMDDの症状に対処する方法はいくつかあります。例えば、ヨガを練習したり、瞑想を試したり、気分を改善する他の方法を見つけることができます。また、食生活を変えることで、症状が和らぐこともあります。さらに、サポートグループなどが助けになるかもしれません。利用可能なすべての治療選択肢について、必ずかかりつけの医師に相談してください。
ヨガがPMSやメノポーズ(閉経)の症状や鬱症状の改善に有効だという研究結果は既に多く出ていますが、PMDDに関する研究はまだ始まったばかりです。今後のリサーチに期待したいと思います。
上記、五十嵐香耶さんが、PMDDが多くの人に周知されるように、そしてヨガセラピーによるアプローチに活かすために、生理前、生理中の不快症状についての簡単なアンケートを行っています。是非ご協力いただければ幸いです。
▶ 生理(月経)に関するアンケート