ナンシーさん(水色のTシャツ)
ナンシー・ウィンターホルターさん
アメリカの名門コロンビア大学の大学院を卒業してから 30 年間Physical Therapist(理学療法士。以下PT)として医療の現場で働き、60才で認定国際ヨガセラピスト(C-IAYT)になる。

【はじめに】
アメリカのIAYT(国際ヨガセラピスト協会)の認定ヨガセラピストには、理学療法士の方が比較的多く、ずっとそのような方に、なぜヨガセラピーを学ぶのかを聞いてみたいと思っており、今回のインタビューとなりました。

PT(理学療法士)として何年働いていますか?

30 年です。

アメリカで理学療法士になるには、どんな学位が必要ですか?

私が PT になるために勉強していた 40 年ほど前は、修士号が必要でしたが、 現在、開業するには博士号が必要になっています。

理学療法士(PT)としての仕事をどう思いますか?

PT として、そして今はヨガセラピスト兼ティーチャーとして、この仕事が大好きです。

PT として十分な知識とキャリアがあるのに、なぜさらにヨーガセラピーを学ぼうと思ったのでしょうか?

それには、いくつかの要因があります。私は、この 5 年間(またはそれ以上)、医療の現場が、「苦しんでいる人々の助けになりたい」という私の本来の目的とは違う方向に進んでいるように感じていました。 書類作成が増え、保険の手続きをするのに時間がかかり、後輩達を指導監督することが求められる一方で、「患者さんに接する」時間はどんどん少なくなっていきました。

治療とは直線的な道筋ではなく、予測不可能なこともありますし、忍耐と注意といった、様々な側面からの「人を中心とした」アプローチが必要です。これらはすべて、ヨガセラピストとしての仕事に内在するものであり、私が学びたかったことでした。

同時に、私は自分の人生を少し見直したいと思っていました。私は現代社会が進んでいる方向とスピードに悩まされていたため、ここで一旦立ち止まって、古来から受け継がれているヨガの叡智を活かして、より穏やかな方法で自分の人生をナビゲートしたいと思ったのです。

ヨガから学んだことは、私の毎日の生活に役立っているとともに、ヨガセラピストとしての仕事にも反映されています。ヨガセラピストとしての仕事は、苦しんでいる人々の助けになりたいという私の人生の目的を、さらに拡張して行くものだと感じています。私は挑戦することが大好きです。常に勉強することが好きな私にとって、ヨーガセラピストという仕事は最適な仕事だと思っています。

Boston Children’s Hospitalのためのファンドレイジング

現在までのヨガに関する経歴を教えてくださいますか?

私は数年前からヨガの練習をしていて、PT として働きながら全米ヨガアライアンスのティーチャートレーニングを修了していました。 その後、地元のシニアセンターやスタジオで教え始め、比較的短期間の内に、チェアヨガ、ミッドライフ・ヨガ、シニア・ヨガ、パーキンソン病患者のためのヨガ、がんサバイバーのためのヨガ、慢性疾患を持つクライアント向けの都市医療デイプログラムなどを教えるようになりました。

これらの経験を通して PT としてのキャリアからセラピュティックなヨガのインストラクターに転向することを決心しました。キャリアシフトの準備のためにヨガセラピストとして最も豊富な情報が得られる学びを探していて Spanda Yoga Movement Therapy のトレーニングを受講しました。その間に、ハンディキャップがある方のためのヨガ・ティーチャーの資格も取得しました。

私は地元で、既に何十年にもわたり理学療法士として公衆衛生の分野で活動してきたため、このエキサイティングな新しい試みに対して、近所の人たちや地元の関係機関から様々なサポートを受けることができました。

ヨガセラピストになるための学習の中で新たに学んだことはありますか?

トレーニング中は、非常に多くのことを学びました。素晴らしい先生方に恵まれ、ヨガセラピストとして活動するために、私が既に PT として身に着けていた知識をベースに、それを、より幅広く、ホリスティックに活用するようにと励ましてもらいました。ヨガの考え方や哲学は、今では私のすべての指導に影響を及ぼしています。ヨガセラピーを学んでいる中では、理学療法士としての仕事の中で既に熟知していることもありましたが、ヨーガセラピーとしての別の新しい視点から学びなおすことができました。また、ヨガセラピーを行う中で、自分自身の身体と精神における探求と発見を通しての自己探求というコンセプトが、とても新鮮でパワフルなものだと感じています。

医療提供者としてクライアントに対して「指示する」ことが多かった私ですが、ヨガセラピストとしては、生徒やクライアントが安全な空間で答えを見つけられるように優しく導き、励まし、寄り添い見つめることへと変わりました。このようなことは、クライアント一人一人にとっても私自身にとっても、自らの成長を促すものだと思います。

PT とヨガセラピストの根本的な違いは何だと思いますか?

それは難しい質問でもあり、簡単な質問でもありますね。 まず、当然ながらトレーニングが全く違います。 私が理学療法士として受けた教育は、かなりの比重で主にサイエンスに基づいており、もちろんそれは私が本当に大切にしていることです。 また、心理学、社会学、人間発達理論なども学びました。欧米の伝統的な医療センターやクリニックで数ヶ月のインターンシップ(無給)を何度も経験し、医療チームの一員になることを学びました。残念ながら、PT が学ばなければならないことの深さと幅を知らない人が多いです。 例えば、私たち PT が創傷治療の訓練を受けていることや、それだけを専門にしている PT がいることを知る人はあまりいません。私は、PT としてのトレーニングと長年の実践を 100%評価していますし、PT としての仕事は私の人生の真の喜びの一つです。

一方ヨガセラピストとしてのトレーニングは、ヨガがあることで、全く違ったものになります。当たり前のようですが、ヨガの学びは、人としての全ての経験が元となり豊かで深く広いです。人生の道です。これから 20 年以上勉強しても、ヨガについて、そしてヨガが人の人生に与える影響について、私が知りたいと思っていることの、ほんの出口位までしかわからないと思います。

みんながヨガをするようになれば、世界を変えることができるかもしれません。私は PT の仕事が大好きで、PT は個人の健康に、そして人々全体の健康に大きな影響を与えると思いますが、ヨガとヨガセラピーを学ぶことで、私はより深い人間、より思いやりのある人間になりました。 そして、私のヨガセラピストとしてのミッションは、まだ始まったばかりだと思っています。

インタビュワ―:YUMIKO M.H.