この記事はNY出身で現在カナダのケベック州にお住まいの「Barrie Rismanさんのブログ」と「Yoga for Healthy Aging」のブログに掲載されたものを許可を得て翻訳、掲載したものです。バリーさんは、ヨガの講師、講演者、ライターとして国際的に活躍しています。著書:『Evolving Your Yoga: Ten Principles for Enlightened Practice』(ヨガを進化させる:悟りのプラクティスのための10の原則)。
アライメントは、ヨガの世界ではよく耳にする言葉ですし、とても興味をそそるトピックです。しかし、混乱しやすく、誤解されやすいトピックでもあります。というのも、ヨガにおけるアライメントは、関連はしてはいるけれども異なる多くの概念を指すことがあるからです。そのため、アライメントはアーサナ(ヨガのポーズ)の指導や練習方法ににおいて、頻繁に使われる言葉でありながら、曖昧な用語のひとつです。
私が、これまでに耳にしてきたヨガのアライメントについての議論の多くは、機能的な動きや生体力学に関連するアライメントにのみ焦点が当たっていたように思います。それらが、アライメントの本質的な側面であることに間違いはないのですが、それだけだと、まるでヨガが骨や筋肉、解剖学、生理学を扱う一つの運動様式に過ぎないかのようであり、身体的なものを超えたものについての言及が欠けているように私には感じられるのです。
本当の意味でのヨガは、常に肉体以上のものでした。ヨガは、人間を身体、呼吸、心、精神の統合された全体として捉えるシステムなのです。ですので、私達を私達たらしめる、これら他の部分を扱わないアライメントについての議論は、私にとって不完全なものに感じられます。
私が過去20年以上にわたって培ってきた指導法では、以下で述べる相互に関連しあい、重層する4層のアライメントを考慮しています。私は、この4層のアライメントは、徐々に微細に深くなっていくものだと考えています。それらは、ヨガの伝統の中にあまねく見ることができ、またアライメント重視のポーズ練習の特徴でもある、外から内へ、総体から微細へと向かう基本原則を反映しています。
1)身体的なアライメントは、最も基本的な層す。アーサナ(ヨガのポーズ)における身体的アライメントとは、身体の形と、身体のさまざまな部分がどこに位置しているかによって、姿勢の形が作られていることを指します。例えば、戦士のポーズ1では、腕は頭上に、足は矢状面(前後)に大きく開き、後ろ足と足は角度をつけ、前膝は90度に曲げて足首の上に置きます。
2)生体力学アライメントとは、アーサナにおける筋肉がどう動くかの仕組みのことです。骨を動かし、関節を安定させ、体をより開放し開いていくために、筋肉をどのように使うか、ということです。これは、身体の仕組みに関する解剖学的な理解と、体全体に走る筋膜の認識を反映したものです。
このような知識を応用してアーサナを最適化することが、動きに対する機能的なアプローチをするということです。。それによって、ヨガ指導者たちはより安全でリスクの少ない指示を出せるようになり、練習で怪我をしにくくすることができるのです。
例えば、戦士のポーズ1では、太ももの後ろの筋肉を使い、腰を体の正中線に沿わせて引き締めることで、骨盤を安定させることで、ポーズが深くなっても腰の安全を保つことができます。腕が頭上にあるとき、上腕三頭筋を頬の方に回すと、首、肩、体幹に自由が生まれます。
この観点からの「正しい」「健康的な」アライメントは、骨、骨と筋肉、筋肉と筋膜、そして身体の構造(骨、筋肉、結合組織)と身体のシステム(神経、循環、リンパ、呼吸、内分泌など)の間に最適な関係があるという考えに基づいています。
3)エネルギー的アライメントとは、生命力であるプラーナ(気)が、より完全かつ自由に流れるように、肉体をどのようにととのえるかということです。これには、微細な身体の調整だけでなく、自然界のすべての要素が身体と心の中で共鳴していることを認識し、それをアーサナの練習で活用することも含まれます。たとえば戦士のポーズ1では、脚の力とグラウンディングを強調することで、大地の要素とルートチャクラのグラウンディングの質をより多く体験することができるのです。
4)心のありよう、というアライメントは、精神、思考、感情や心と言った私達の内面をどのように統合し練習に取り入れていくかということです。私達がこの世界でどうなりたいか、どうありたいかをサポートするため、身体的な練習という手段を通して、心のありよう、精神的、感情的、あるいは霊的な望ましい状態を育みます。このレベルでは、戦士1のポーズを練習することは、より多くの勇気と恐れない心を養う機会であり、あるいは、いわゆる古来戦士の精神を私達が関連づけられる方法で体現する機会と考えることができます。
そこで、ヨガの哲学、原理、徳を理解することが必要になってきます。身体的な練習を導き指南しながらも、そこに哲学的要素を加えて行きます。
以上で述べたようなアライメントの構造を頭に置いておくことで、今後、ヨガのアライメントについて読んだり、聞いたりしたことを把握しようとするときに、そこで語られていることの本質がより明確になり、あなたの練習や指導がより豊かになるためのヒントになることを願います。
翻訳:村松ホーバン由美子