2001年のアメリカの同時多発テロから20年もの時が流れました。私が住んでいた、NY州のお隣のNJ州でも、たくさんの犠牲者が出ました。あの朝、夫からの「アメリカが攻撃されている。すぐに子供を迎えに行って。」という電話の声が今も耳に残っています。
以下は2005年のTIME誌に掲載された”How to Get Out Alive” by Amanda Ripley, TIME Magazine, Monday, Apr. 25, 2005という記事を私のプライベートのブログ上にまとめたものですが、先日、ポリヴェーガル理論とヨガについて書いている時に、正にこの理論を裏付けるような記事を翻訳したことがあったと思い出して、こちらに転載することにしました。
その後も、世界で 大災害が後を絶ちませんが、是非とも心に留めておきたいレポートだと思いました。
運悪く不意の災害に見舞われた時、人の取る行動は三つのカテゴリーに分かれる。落ち着いて行動できる人は10~15%、我を失って泣き叫ぶ人は15%以下、残りの大多数は、ショック状態に陥り呆然として何もできない状態になってしまう。(Aviation,Space, and Environmental Medicine誌で発表されたイギリスの心理学者ジョン・リーチの研究による)
National Institute of Standards and Technology (NIST)が9/11の生存者900人に行ったインタビューの結果 から、飛行機衝突の衝撃後から避難を始めるまで平均6分かかっていたことがわかった。人によっては30分 も避難せずにいたのはなぜか?およそ1000人の人がコンピューターを消したり、身の回りのものを集めたり 、知り合いに電話をしたりしていて逃げ遅れた。また、このような時こそ迅速に階段を駆け下りているはず なのに、ビルの外に出ることのできた約15,410人が、階段を一階分下りるのに1分もかかっていた。避難路を 研究するエンジニアの予測の2倍かかっていたことになる。
事実、ビルの73階から生還したエリア・ゼデノさんは、「不思議なことに全然焦る気持ちが起こらなかった 。ビルの揺れ方、音響からして、本当は焦りまくっていいはずなのに、まるで意図的に自分の心が音をシャ ットアウトしてしまったようだった。」と述べている。また、飛行機衝突の衝撃でビルが激しく南側に傾い てさえいたのに、すぐに避難しよういう本能的な衝動は起こらず、周りの人間も皆、今起こっていることが 信じられないというような様子で避難行動を起こさなかったという。彼女の場合ラッキーだったのは、「何 が起こったの?」と尋ねる彼女に、一人の同僚が「ビルから出ろ!」という叫び声が戻ってきたことだった 。彼女は、ただその命令に従って避難を開始したのであって、あの時、その声が聞こえなかったら、自分で も今頃どうなっていたかわからないと語っている。
人の脳は一つの複雑な情報を処理するのに8~10秒かかるが、一度にあまりにたくさんの情報の洪水に遭った 場合、本来なら脳の処理スピードを高めようとしてもいいはずなのに、あたかも車が低速ギアに切りかえた 時のような状態になってしまう。それはなぜか?
食肉獣の餌食になろうしている動物は、無意識のうちに体が麻痺してしまう。そうすると食肉獣は、獲物が病気だと思って、リスクを避けるために放してしまうことがあるという。同様の行動がレイプの犠牲者にも あるという調査がある。つまり本能的な行動が緊急時の生存を却って脅かしてしまっていたのである。
1997年、離陸を待つパンナム機にオランダのKLM機が衝突、大炎上。KLM機の乗客583人は全員即死、パンナム 機396人の乗客のうち326人が死亡し航空史上最悪の大惨事となった。後の調査によると、KLM機が衝突した後 も多くの生存者がおりパンナム機が火炎に飲み込まれるまでの間に少なくとも60秒の猶予があったというの である。ところが、多くの人はショック状態で呆然となり、ただ座ったまま火に飲まれてしまった。生存者 の一人であるフロイさんは、「(衝突の後)私の心は空白になり、何が起こっているのかさえ聞こえなかった。」と語っている。夫ポールさんの逃げろという言葉に引きづられるように煙の中を夫の後に続いたという。飛行機から飛び降りる直前に後ろを振り返ると友人が、ただ呆然と座っている姿が目に入ったという。
非常時によって、人が三つのカテゴリーの、どちらに入るかは、非常時でない普段のその人の行動からは予測できないという。それでは、本能を打ち消して冷静な行動を取れるようにするには、どうしたらいいのか?それは、普段から非常時のための心の地図を描いておくことである。
ちなみに、パンナム生存者の上記のポール氏は、こどもの頃、映画館で火事に遭った経験があり、それ以来 、必ず不慣れな場所では避難路、避難口を確認していた。事故の当日も、離陸を待つ間、最寄の避難口をチェックして妻にも教えていたという。またTower1の49階から衝撃直後に避難を始め助かったマヌエルさんは、前年に自宅が火事になり、子どもの頃はペルーで大地震に遭遇、その後もロスで数回地震に遭った経験があった。
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村松ホーバン由美子:日本ヨガメディカル協会公認講師&WEB編集責任者
E-RYT500、C-IAYT(国際ヨガセラピスト協会認定セラピスト)、介護予防指導士、米国シニアヨガ指導士、ムーブメントセラピー指導者、ORIGINAL STRENGHTH認定プロフェッショナル、日英通訳翻訳。埼玉県在住。
【担当講座】「解剖学② ヨガセラピー✖筋膜」「ヨガ✖ポリヴェーガル理論✖自律神経」「様々なポーズの軽減法」