一般的に早朝、一日の始まりにヨガを行うことで心と体がととのい集中力が向上し、一日を通じて気持ちよく過ごすことができると言われています。特にアシュタンガヨガでは夜明け前、つまり太陽が昇る前に行うことが推奨されています。これは、古代の教えに基づくもので、宇宙のエネルギーが最も穏やかで、精神的な活動に適した時間とされているからだそうです。
私も起きぬけでヨガをするのが習慣ですが、朝イチで体が固まっているので、決して無理なポーズはせずに、非常にスローペースで体の各所をほぐすようにしています。でも、数か月前のある朝、スケジュールの関係で、短時間でいつものルーティーンをこなそうとしていた時に、腰のあたりにピキッといういやな感覚があって痛めてしまったことがありました。
あさイチは怪我しやすい
脊椎専門家として有名で多くのプロのアスリートに科学的根拠に基づいた腰痛の予防とリハビリテーションを提供してきたカナダのスチュアート・マクギル教授によると、朝起き抜けに行うヨガは怪我をしやすいとされています。私たちが眠っている間に脊椎の椎間板は水分を吸収し、膨らむため、朝には私たちの背が実際に高くなっています。これは一見良いことのように思えますが、マクギル教授によれば、実はこの状態で脊椎は非常に脆く、怪我のリスクが高まるそうです。マクギル教授の研究によると、水分を多く含む椎間板は、ストレスがかかったときに砕けやすいことが示されました。さらに、朝起きた直後に前屈や後屈などをストレスを脊椎に負荷するとウォーキングなどで体が温まった後に比べて椎間板への負担が約3倍になることも実証されました。
マクギル教授は朝ヨガを行う場合は、怪我のリスクを低減するために起床後すぐにヨガマットに向かうのではなく、軽いウォーミングアップや少なくとも30分から1時間のウォーキングをして体を適切に温めることを推奨しています。
俳優の鶴太郎さんも、日の出前からヨガをしていることで有名ですが、検索してみると、あるネット記事でこんなことを言っています。「11時に起きてね、浄化法やったり、ちょっと三線の稽古やったり、発声練習やったり2時間ぐらいそういうことやって、そして深夜1時からヨガが始まるわけで。4時間ぐらいかかっちゃうんですよ」つまり、起きてすぐヨガしているわけではなくて、十分に体を温めてから行っているということで、さすが!体の声に、きちんと耳を傾けている方なのだと思いました。
村松ホーバン由美子:日本ヨガメディカル協会公認講師&WEB編集責任者
E-RYT500、C-IAYT(国際ヨガセラピスト協会認定セラピスト)、介護予防指導士、米国シニアヨガ指導士、ムーブメントセラピー指導者、ORIGINAL STRENGHTH認定プロフェッショナル、日英通訳翻訳。埼玉県在住。
【担当講座】「解剖学② ヨガセラピー✖筋膜」「ヨガ✖ポリヴェーガル理論✖自律神経」「様々なポーズの軽減法」