足の親指
足の親指

ポーズに体を合わせるのではなく、体にポーズを合わせる

統計によると、ヨガで怪我をしやすい場所は腰40%膝20%肩15%首10%と続きます。既に、何度か書いていますが、当然ですが人によって骨格は違います。手、足、胴の長さが違うのはもちろん、骨の形も違い、それによって関節の可動域も大きく変わってきます。努力とかの問題でではないのです。 

ヨガによる怪我につながる主な原因は、関節まわりの筋肉を使わずに自分の可動域を超えてポーズを深めようと無理をした場合、ポーズの際のアライメント(手足胴体の正しい配置)が正しくなかった場合などです。

アライメントとは

たとえば自転車でこけて、自転車の前輪が曲がってしまったことはありませんか?ほんの少しの傾きでも、まっすぐに走るのが難しいですよね。この場合は、自転車の車体に対するタイヤの配置=アライメントが正しくくなったということです。

車でも、車軸が曲がると同じことが起こります。運転していると車が自然と片側に寄って行ってしまいますし、そのまま無理に運転していると、片側のタイヤだけの磨耗が進み、事故につながります。体でも同じことが起こります。

関節を支える靭帯と筋肉

また、どんな物であっても、繋ぎ目というのは、弱いものですよね。関節とは、骨と骨の繋ぎ目です。だから基本、怪我しやすい場所になります。それを守るために、関節周りには靭帯や筋肉がしっかりとついています。

横にはスライドしないし、ぐるぐる回らない

また膝関節は蝶番関節と言って運動の方向性が限られている関節なので、ヨガの無理なポーズによって、ひねられたりすると、簡単に怪我につながります。怪我しやすいポーズは、鳩のポーズ、蓮華座、三角のポーズなどです。インスタ映えのポーズほど要注意です。

体の柔らかい人は、えてして関節まわりの筋肉が使えていないことが多く、やがて、怪我につながる方が少なくありません。

関節まわりの筋肉を使う

親指付け根(拇指球 big toe mound)を意識すると、ポーズが安定したり深まったりアライメントが調整されます。

  1. まずは、足は腰幅で、まっすぐ立ってください(タダサナ)。
  2. 足の指をすべて上げます。(足裏にアーチがうまれます。)Keep that.
  3. 拇指球をマットにしっかりと押してから、ボタンを押すように、親指をしっかりとマットにつけます。(押した力が脚を伝わって股関節まで届きます。もっと詳しく言えば、足先から骨盤までの内旋が起きます。)Keep that.
  4. 足指をしっかりと開きます。Keep that.
  5. 小指をマットにしっかりとつけます。

この一連の動作により、膝周りの筋肉が働き膝の安定を生みます。Keep thatというのは、たとえばステップ2で足指を上げて、はい休め。ではなく、その状態、筋肉のエンゲージメントをキープしたまま次のステップに入るということです。ポーズはレイヤーで積み重ねて行くものと考えてください。

■立位のポーズで試してみる

まずは膝を少し曲げる→拇指球を押す→親指を押す→指を広げる→小指を押す→脚を伸ばす。

足を曲げる立位のポーズ、たとえば戦士のポーズ2(図・右から2番目)では、膝が内側に倒れるのを防ぎます。

■座位のポーズで試してみる

座ったポーズでは、たとえば頭をひざにつけるポーズ(Head to Toe Pose / Parivrtta Janu Sirsasana)では、伸ばした方の拇指球を押し出し、反対に小指は自分の方に引き、脚の裏全体でしっかりと床を押します。

開脚前屈(Wide-Angle Seated Forward Bend / Upavistha Konasana 図・一番右)、背中を伸ばすポーズ/座位の前屈(Seated Forward Bend / Paschimottanasana)も同じです。脚の内側の筋肉が働き、足が外側に開いてしまう傾向を防ぐだけでなく、下腹も引き込まれ背筋が伸びます。

■仰向けのポーズで試してみる

仰向けの親指をつかむポーズ(ベルトを使って)で両足裏を壁につけた状態から始める。床についている足の親指の付け根で壁をしっかりと押します。(膝とつま先は、まっすぐ天井を向けて行います。 )

足の先から、脚を通り骨盤までの内旋のエネルギーを見つめてください。このポーズは反対の脚を高く上げることが目的ではありません。床についている脚の方に注意を向けましょう。壁のない所でも、この感覚をもってポーズをします。

検証:拇指球を押す、親指を押す、かかとを押すでは何が違うのか?上記のポーズで床についている方の足のかかと親指、拇指球、それぞれを押して実験してみると体が教えてくれます。かかとや親指を押した場合には、反発する力は直線的ですが、拇指球を押した場合には、骨盤までの内旋エネルギーが感じられます。

橋のポーズ(Setu Bandhasana)、上向きの弓のポーズ(Urdhva Dhanurasana)で、ありがちなのは両膝が開いてしまうことですが、膝を閉じようとするよりも、足の親指で床を押すことで膝は自然に近づきます。

浮き指を防ぐ

NHKの「ガッテン」で、日本人で足の指が1本以上浮いている人は、男性の6割、女性の8割にも上るという研究結果を紹介していました。

番組によると、浮き足になると、重心が後ろ側に移動。体はバランスを保とうと、無意識に上半身を前に傾け、猫背に。すると頭の重さを支えるために、首から腰にかけての筋肉に余計な負荷がかかり、頭痛や肩こり、腰痛などにつながると考えられているそうです。

また浮き指の人は正常な人に比べて、1歩歩くごとに、膝に3キロ相当の負荷が余分にかかるとも言ってました。

ヨガで足の指を使って行くことは、やはり理にかなっていると言えます。

一日一ポイントの練習 Set an Intention

私はホームプラクティスでは、その日に一点だけ集中して気をつける場所を決めてから練習します。たとえば、今日は親指に精神を集中して練習しようと決めたり、今日は膝のアライメントだけに集中しようとかです。ただ漫然とポーズをするよりは、短い練習でも得るところが大きいです。


筆者ホーバン村松由美子

米・ニュージャージー州在住。1982年ハタヨガに出会う。1986年に渡米。RYT500 & Pre-Natal(マタニティ)& Prime of Life(シニア)ヨガインストラクター。