「パワーオブナウ」「ニューアース」この2冊の本は、私が十数年にわたって何度も繰り返し読んでいる唯一の本です。Audibleにも入れていて、電車で移動中や眠れない夜などに聞いています。この本が書かれたのは、1997年ですが、2008年にアメリカでは絶大な人気と影響力を誇るテレビ番組の司会者オプラ・ウィンフリーが紹介したことで、瞬く間に超ベストセラーとなり、33か国語に訳されました。著者のエックハルト・トールは同年ニューヨーク・タイムズが「アメリカで最も人気のある精神世界分野の著者」と評されました。精神世界というと、ちょっと怪しいスピリチュアル系?というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、エックハルトは、少年期から成人期にかけて抑鬱、不安、恐怖に悩まされ続けたことから、哲学、心理学、様々な宗教を探求して、ケンブリッジ大学の大学院にまで進んでおり、彼の著書ではキリスト教や仏教を引用することはありますが、一つの宗教に偏ることなく、哲学的でもあり、また心理学的でもあります。エックハルトの著書の主要テーマの一部を紹介します。

何が私達の苦しみを生むのか?

偽りのアイデンティティ/自己意識

たとえば、多くの人が学歴、地位、財産、家柄などの特定の属性や、所有するもの、過去の実績などに基づいて自分を定義する傾向にあります。しかし、そのようなアイデンティティは、常に他者や周りの環境と比較したり対立することで、自らを守り、自分の存在意義を見い出そうとするため、常に不安定であり、嫉妬や不安や恐れを生みます。その結果、不要な対立や摩擦、苦しみが生まれます。このような偽りのアイデンティティをエカハルトは「エゴ」と呼びます。

思考と感情

また、思考は過去に起こったことに囚われがちです。たとえば、過去の苦しみや悲しみが何度も繰り返し思い出しがちです。過去に起こった出来事をストーリー(ナラティブ)として思い起こしている時、体は過去と現在の区別ができないので、今、現実に経験していることととして反応し、新たな悲しみや苦しみの感情となります。そして、そのプロセスが何度も何度も思考と体と感情の間で繰り返され、私達は負のスパイラルから抜け出せなくなってしまいます。真の現実は「今」という瞬間だけなのに、思考は「今」この瞬間の価値を見失わせます。

私たちが日常の中で感じている苦しみや不満のほとんどは、私たちの「エゴ」が生み出す思考パターンが原因となっています。多くの場合、私たちが困難やトラブルに直面した時、その問題自体よりも、その問題に対する私たちの反応や考え方が問題を大きくすることが多いのです。私達は苦しみや不満や不幸の原因を外部の環境や他者の行動のせいにしがちですが、真の原因は私達の内面、心のありように基因していることが多いということです。まずは、そのことに気づくことが大切です。もちろん、それは容易なことではありません。何故なら、私たちは常に自分の考えや行動を自己防衛し正当化する傾向があるからです。

自分が自分を苦しめている

苦しみが昨日の環境や他人によってもたらせれたものだとしても、今、それを反芻しているのは自分です。つまり、今の自分がそのことを考えることによって自分を苦しめているのです。今、現在の苦しみや悲しみの感情は自分が原因だということに気づくことができれば自分を止めることはできるはずです。

自分の中の負の感情を客観視して、自らの感情や反応を認識し、それに抵抗したり、ジャッジしたりもせずに、ただ一時的にそこにある自分の内面の状態として観察することで、思考と感情の間で起こる負のスパイラルから解放されていきます。

苦しみからの解放

ですのでエゴから生まれる思考や感情のパターンや過去や未来への執着に客観的気づき、距離を取り、「今」の瞬間に意識的に存在しようとすることで、エゴに振り回されるのを避け、エゴ的思考からくる苦しみから解放され、(それは、あなたを変えるということではなく、深層にある真のあなた自身ではない表層の自己意識を捨てるということです。)より豊かで自由で平和な生活を送ることができるでしょう。