チャトランガのポーズは、一般的なヨガのプラクティスの中で、何度も行いますが、別名肩シュレッダーとまで言われることがあるほど、正しいアライメントで行わないと、いずれ肩の痛みにつながってきます。

以前に書いた「チャトランガを安全に行う3ステップ」も参考にしていただきたいのですが、その中で深くは触れなかった、肘のアライメントについて、興味深い動画を見つけたので、その動画に基づいて解説していきます。元動画はこちらです。https://www.youtube.com/watch?v=T4n3ZoIVJYY(英語ONLY)

肘を両脇にくっつける問題

チャトランガのポーズで「両脇を締める。」という指示を耳にしたことのある方は多いと思います。ネットでも「チャトランガ やり方」で検索すると「脇を締めて肘を体側に添わせて身体を床に近づけていき、、、」というような文章を散見します。

広背筋

その名の通り、モモンガが空中を飛躍する時のように背中に広く広がっている上半身で最も大きい筋肉です。一般のトレーニングでは、プルアップ(懸垂)やボートのオール漕ぎのような動作で使われます。

広背筋(Wikipediaより)

広背筋がくっついている場所を非常に大まかに言えば、①お尻の割れ目あたりから胸のあたりまでの背骨にかけて。②肩甲骨の下端③上腕の前側です。(本当は肋骨にもくっついています。)

こちらの動画が、とてもかわいくてわかりやすいので見てみてください。

そしてこちらも。

さて、この二つの動画で注目したいのが、広背筋の作用です。

①腕を背中側に引く(鉄棒にぶら下がってプルアップ)
②肩関節を内側にひねる。(巻き肩になる)

試しに鏡に横向きに立って、肘をしっかりと脇腹にくっつけて、チャトランガの姿勢で肘を90度に曲げて後ろに引いて行ってみてください。ボートのオールを引く時のような動作です。すると肩先(Top of the Shoulder)は自然に前に出るはずです。

チャトランガで脇を締めて肘を曲げて行くと広背筋の②の作用で肩関節の内転(巻き肩)が起きてしまうということです。

肩の前傾が置きるとインピンジメント症候群や滑液包炎や棘上筋断裂につながるということは、「チャトランガを安全に行う3STEP」で書きました。また、ローテーターカフの怪我の原因の一つは、肩甲上腕リズムにあるということを、「肩の痛みとヨガ」で書いていますので、そちらも合わせて読んでください。)

棘上筋

肩を上から見た図。棘上筋が肩甲骨の骨と骨の狭い隙間を抜けている。

棘上筋は御覧の通り、広背筋に比べたら、いかにも弱弱しく見える小さな筋肉です。肩甲骨と上腕骨(イメージとしては肩先の前の方)を繋ぎ肩関節を安定させる役割があります。上記のように広背筋は肩関節を内転させますが、棘上筋は拮抗筋として肩関節を外転させます。

つまり、チャトランガで脇を締めることで、広背筋の作用で肩が内転してしまうのを、このか弱い棘上筋が、拮抗筋として、ふんばって内転させすぎないようにしようと頑張るわけですが、勝ち目のない戦いとなり、ついには棘上筋は切り倒されてしまうのです。(チャトランガでは、さらに、肩にがっつりと自重がかかり負担はさらに大きくなります。)

ですので、チャトランガを行う際には、あえて肩を広くとって肘は脇から離して方の前傾を防ぎながら行うことが大切です。

どの位、離すかは骨の形状や関節の可動域の個人差があるので、それによって当然ポーズにも個人差が生まれますが、鏡に横向きでチャトランガをゆっくりと行ってみて、どこの時点でも、肩が前傾しない腕の位置(手の置き場所、肘の位置)を見つけてみてください。ヨガはオリンピックの体操種目などように金メダルを取るために教科書どおりのポーズを決めることではありません。私のブログで何度も繰り返し書いていますが、自分の体をポーズに合わせるのではなく、ポーズを自分の体に合わせて行きましょう。

肩甲骨を肩関節側から見た画像 by Paul GrilLey 骨の形状は3人三様。上部の下の隙間に注目。この細い隙間を棘上筋は通過するため棘上筋はこすれてダメージを受け断裂しやすい。