何故マインドフルネス×ヨガなのか?
「お茶を飲むとき、そこだけに注視していればそれは既にヨガである。」
これは私が初めてヨガを真に理解した、恩師の言葉です。
ヨガにはそもそもマインドフルネスの要素が備わっています。しかし現在、世の中で行われている多くのヨガクラスでは、どちらかというとエクササイズ的な要素に比重が置かれており、受講される方もダイエットや筋力維持、ストレッチなどの運動療法を目的とされている方がほとんどです。また、初心者の方にヨガを勧めれば「体が硬いから」と遠慮されます。
ヨガの本質が伝わっていないんだなぁと常々思っていました。この誤解を解くには、エクササイズ的要素を抑え、シングルタスクになること、つまりマインドフルネスを際立たせたプログラムがあると良いなと感じていました。
そんな時にスタッフとして携わっていた日本ヨガメディカル協会で、心身の不調を抱えた方向けプログラム「マインドフルネス・ヨガセラピー(通称MYT/Mindfulness Yoga Therapy)」 を考案する話が立ち上がり、二つ返事でチームに加わらせていただきました。
マインドフルネス・ヨガセラピー(MYT)の特徴
マインドフルネスヨガセラピーは心身の不調を抱えた方向けとして考案しましたので、ポーズはごくごく簡単なものばかり集めました。しかし実際にクラスをスタートしてみると、簡単だからこその味わい深さが有ることに気づきました。同じ動作を延々繰り返しても疲れないくらいの難易度、スピードで行うと、受講生さんたちの呼吸はどんどん穏やかになり、リラックスしている様子が見て取れました。また、時間の経過とともに深いゾーンに入るような感覚もありました。
そこで当初よりもプログラム時間を15分延長し、ポーズは2つほど減らしました。つまり、一つのポーズにかける時間を増やしたことになります。この修正により受講される方には、よりマインドフルネスな状態に入っていただきやすくなり、取り組みやすさ、継続しやすさにも繋がったと思っています。
このように、マインドフルネスヨガセラピー・プログラム(MYTプログラム)の一番の特徴は、同じ動きをスローモーションで延々繰り返すことになります。クラスではポーズ以外にも、歩行瞑想、リストラティブヨガなども行いますが、いずれも自分と静かに繋がる時間、マインドフルになる時間として、日常では取りにくい贅沢な時間の過ごし方をプレゼントするような気持でガイドしたり、意識していただくよう声掛けをしています。
MYTプログラムを実践すると
これまで受講された方からいただいた感想には
「深い安心感が得られた」
「体が軽くなって気持ちが楽になった」
「マイナス思考がプラス思考になってきた」
「睡眠導入剤を使わなくても眠ることができた」
などなど…
個人差はありますが、常用していた薬を減らすことができたなどの嬉しいご報告もいただいております。ヨガは決して治療ではありませんが、治療の補完となり、Q.O.L向上の後押しとなる手応えこ確実に感じています。
特にMYTプログラムは、現在治療中や病後の方、運動が苦手な方、ハンディをお持ちの方などにも取り組み易く考案しましたので、医療費削減などの社会貢献に繋がるのではと期待しています。
更には医療現場でお勤めの方のバーンアウト予防、働き盛りの年代の心身のメンテナンスなど、広い汎用性にも着目していただきたいと願っています。
文責:石井及子(MYTプログラム・チーフ)
マインドフルネスヨガセラピー(MYT)のご受講をきっかけに難病のベーチェット病から寛解された五十嵐香耶さんに話しを伺いました。五十嵐さんは、現在、神奈川県川崎市でSATTViCA YOGA SCHOOLサトヴィカ・ヨガスクールの代表をされています。
Q. 何時頃、ご病気を発症されましたか。
2008年、第二子を妊娠中に体調不良を自覚。口内炎が多発し、原因不明の疲労感に悩まされていました。2011年と2013年に抜歯をきっかけに回盲部に炎症を発症、検査入院をするも病名はつかず、薬も処方されず安静にするのみでした。遺伝子の検査では、ベーチェット病になりやすい型であることがわかっていました。突発的な腹痛と下痢に悩まされながら4年過ごしました。
2015年、全身に炎症の症状が広がり、高熱と疼痛で救急外来へ。炎症の数値が高く、抗生剤が効かないため、自己免疫疾患の疑いで入院。各種症状から、ベーチェット病と診断を受けました。
免疫抑制剤(自己注射)を処方されて症状が落ち着きました。2022年まで、免疫抑制剤を処方されていました。薬を使用しはじめてから、関節に炎症が出るようになり、医師に薬を打つと不調が起きると訴えていましたが、副作用ではなく、病気の症状であるため、薬を使うことで抑えることができると言われていました。
Q. ベーチェット病について教えてください。
ベーチェット病は口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの症状を主症状とする慢性再発性の全身性炎症性疾患です。私の場合は腸管型ベーチェット病といい、腹痛、下痢などと口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍が主症状でした。2013年、内視鏡検査で右下腹部にあたる回盲部に大きな潰瘍があることが確認できました。
Q. MYTに出会われるまでの経緯を教えてください。
子どもの頃から、自分と他人の考えの区別がつきにくく、人との境界線があいまいなところがありました。人の影響を受けやすく、自分の感じていることを言葉にするのが苦手でした。自己免疫疾患が、自分の細胞を異物と見なして攻撃しようとするということを知り、心と身体がリンクしているように思い、このままでは身体が壊れてしまうと感じたため、2014年にヴィパッサナー瞑想の道場で10日間の瞑想コースに参加しました。
以来、瞑想を行うと、心が落ち着き身体の症状がいくらか楽になる自覚があったため、より深くマインドフルネスを学んでみたいと、講座を探していました。検索で見つけて、ピンときました。
Q. MYTを受講されていた時に、何か心理的なブレークスルーのような経験をされたのでしょうか?
7年以上悩まされていた肩関節のこわばりや首の痛み、異常なコリが、MYTで習ったポーズを3日ほど続けたことで解消されたことから肩や首の痛みが自己免疫疾患による関節炎であるという思い込みに気付きました。肩を回したあとの、仰向けの快適さはこれまでに体験したことのないものでした。力が抜けて、心も楽になりました。
Q. MYTを受講後、回復に向かわれ始めた時の思いをお聞かせいただけますか?以前、すぐに薬を中断することができた、と話されていましたが、中断しても大丈夫と思われたのはなぜでしょうか?なぜ、それがMYTのおかげだと思われたのでしょうか?MYTの何がご病気からの回復を助けたと思われますか?
病気、特に難病は病院に通うことでしか緩和あるいは寛解できないと思っていましたが、日に数分ずつ肩を回しただけで7年悩まされたコリと痛みから解放されたことで自分で自分を治すことができるという自信を持ちました。腸の炎症が解消した理由は正直わかりませんが、身体が緩み心が楽になったことで、身体のあらゆる不調が消えたように感じています。以来、ベーチェット病の症状と思われる関節の不調などが出現しかけても、MYTを実践することで、自力で回復できると信じて練習を行うことが出来ました。実際に、回復もしました。
MYTを受講してすぐに薬を中断しましたが、自分で自分を治せると自信が持てたため、主治医に薬の中断を訴え、「再発する」と反対を受けながらもなんとか中断させてもらいました。その後半年間で2度の定期検査を受け、異常が見当たらないため寛解と診断を受けました。
マインドフルネスヨガセラピー・プログラムは、オンラインでご参加いただけます。ヨガ未経験者でも安全にご参加いただけます。詳細はこちら