アメリカで大変人気のある現在受講中のジョン・カバット氏が提唱するマインドフルネス(MBSR)Mindfulness-Based Stress Reductionも、最終レポートとまとめです。

今ここ

MBSRでは、仰向けになって足のつま先から頭のてっぺんまで順番に意識を巡らせて行く座位の瞑想、Body Scan、マインドフルハタ・ヨガ、歩行瞑想を訓練上の4本の柱としています。

どの瞑想方法においても呼吸に意識を向けます。これを日々、続けることによって、呼吸は旧知の友、または力強い同盟者のようになり、ヒーリングへと導かれ、息絶えるまで人生をこの瞬間瞬間、一息、一息を大切にして生きることができるようになるとジョンカバットは言っています。

Human Being Vs. Human Doing

英語では、人間のことをHuman Beingと言いますが、現代社会では人はHuman Doingになってしまっているとジョン・カバット氏は、言っています。

私たちの生活のスピードは、どんどん速くなっておりDoing(すること)でいっぱいです。次々とDoingに翻弄されて、一生さえ消えて行くかもしれません。

それに気づく訓練を重ねることにより、DoingモードからBeing (今ここにある、この瞬間にいる)モードにギアを切り替えることが上手になっていくことを目指します。

身を整え、呼吸を整え、心が整う

つまりは、これらの考え方は、禅の考え方なのです。禅の焼き直しと言ってもいいかもしれません。ジョン・カバット氏自身も、仏教を西洋人にわかりやすいように宗教色を廃し、医学的、科学的に焼きなおしたものと言っています。(このマインドフルネスは、日本に逆輸入されて人気が出てきているようです。)

マインドフルネス=気づき=仏教用語のサティ

マインドフルネスは、パーリ語(上座部仏教の古典語)のサティのことで、日本語では「気づき」または「念」と訳されています。「気づき」とは今の自分に気がつく、瞬間瞬間の自分に気がつくということです。

そして「気づく」ことはお釈迦様が説く、人生の苦しみから抜け出すための八つの正しい道「八正道」の内の大切なひとつです。

ちなみに八正道は

①正見=正しいものの見方
②正思惟=正しいものの考え方
③正語=正しいことば
④正業=正しい行い
⑤正命=正しい生活
⑥正精進=正しい努力
⑦正念=正しい念おもい
⑧正定=正しい心の統一

気づき上手、手放し上手になる

禅の場合は、一生得られないかもしれない悟りの境地を目指して何十年と修行を続けていくものなのだと思いますが、MBSRの目指すのは「悟りの境地」ではなく、悩みや苦しみや喜びの感情、次々とわいてくる雑念は人間の特徴であるので、それはそれであるものだと受容した上で、過去のことを思い出してクヨクヨ、イライラしたり未来のことを考え思い悩んだりする感情と思考に翻弄されている自分に「瞬間瞬間気づく」、そして、それを「手放す」。

この「気づく→手放す」というメンタルトレーニングを日々こつこつと訓練することにより、気づき上手、手放し上手になって今を生きることです。その副産物として、ストレスも減少し生きている今を充実して過ごすことができるようになるのです。

2時間x8週=16時間という禅の修業には比べものにならないほどの短期間のトレーニングですが、実際にクラスメート達の中では、何人もの人が、このクラスに参加したことは”Life Changing”(人生観を変えるもの)だったと発表していました。特に、数ヶ月前に心臓発作で99%死にかけ、医者に薦められて参加したという男性は、実際に自分のこれからのストレスフルな治療とリハビリに向き合う上で実に役立つものであったと述べていました。

心の働き(思考&感情)を観察する

MBSRのマインドフルネスは、1週1週、参加者に課題を与え、取り組み、それを次のクラスまで毎日宿題として実行することを課し、次のクラスでその成果を確かめ合うという方法で、人々に身を整えることと呼吸を整えることを体感させていくというハウツーが凡人にもわかりやすいのです。

MBSRクラスの中での1週間ごと宿題が、誰にでも役に立つと思うので紹介します。毎日、課題にそったジャーナル(日記)をつけます。

今日あった「快」の出来事を、一つ書き出します。

質問1.その出来事が起こった時、快のフィーリングに気づきましたか?

質問2.その時、体はどんな感覚でしたか?

質問3.その出来事に付随する、ムード、フィーリング、考えはどんなものでしたか?

質問4.その出来事について書いている今、心にはどんな考えがありますか?

これを一週間続けます。

「不快」な出来事について書きます。

次の一週間はまったく同じ質問ですが、「不快」な出来事について書きます。

コミュニケーションについて書く

そして次の週は、コミュニケーション・エクササイズで、「誰と何についてコミュニケーションしましたか?」です。

質問1.どんなふうに困難なコミュニケーションになりましたか?

質問2.あなたは、その相手または状況から本当は何を欲していましたか?でも実際には何を得ましたか?

質問3.あなたの相手は、あなたにどうして欲しかったのですか?その人は、実際には、何を得ましたか?

質問4.そのコミュニケーションが起こっている最中、そしてその後、あなたはどのように感じましたか?

質問5.その問題は、もう解決しましたか?どのように解決しましたか?

これらを一週間と言わず、ずっと続けていると気づきが生まれます。自分が、何に対してどのように反応しているのかがよくわかるとともに、次に同様のまたは別の事象が起こった場合に、一拍置く(一呼吸する)余裕が生まれ、それにより、自分を客観視することができるようになります。特に負の状況にあっては、即反応してしまう自分を止めて、冷静になることができるようになります。

刺激と反応の間にあるもの

ホロコーストの生存者、心理学者で「夜と霧―ドイツ収容所の体験記録」の作者ビクトル・フランクルは、こんなことを書いています。

“Between stimulus and response there’s a space, in that space lies our power to choose our response, in our response lies our growth and our freedom.”

「刺激と反応の間には少しの空間があります。その空間には私たちが自分の反応を選ぶための力が横たわっています。私たちの反応には私たちの成長と自由が横たわっています。」

【MBSRクラスで使った課題本】
マインドフルネスストレス低減法

【クラスが取れない人のための自宅練習用】
4枚組のCDで実践する マインドフルネス瞑想ガイド