マインドフルネスの研修会参加レポートを3回にわたって掲載します。参加したのは、アメリカのニュージャージー州で行われたマインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-based stress reduction:MBSR)8週間のコースでマインドフルネスをアメリカで有名にした立役者のジョン・カバット・ジン博士によるコースす。

参加者は、非常にバラエティーに富んでいて、ストレスを抱えた白人女性心臓外科医、黒人女性麻酔医、医者に勧められてきたという心臓発作で死にそうになったインド系の男性(奥さんと参加)、夫のDVで苦しんでいる白人女性、怒りのコントロールがうまくできない白人男性、結婚生活の危機を解消しようと参加したレズビアンカップルなどなど。

コース初日

数年前から毎朝ヨガの後に15分ほど瞑想はしているのですが、やはり時には色々な雑念がもくもくと真夏の入道雲のようにわいてきて、どうにも集中できな日があります。

雑念は雑念として認識して、呼吸に意識を移してあげればいいというのですが、それでも、あまりに雑念が多すぎてどうしようもない日もあります。

初日の4時間セミナーの中で一番の収穫は、「それでもいいのだ。」ということ。その理由は、「雑念→雑念に気づく→呼吸に意識を戻す→雑念→雑念に気づく→呼吸に意識を戻す」と繰り返している内に、「まずは雑念に素早く気づけるようになり、その結果、呼吸に意識を戻すことにも習熟してくる。」ためです。

たとえば雑念は「モグラ叩きゲーム」のモグラのようなもので、ゲームに上達してくると、もぐらが頭を出しかけた瞬間に気づいて、すばやく叩けるようなものかもしれません。

神経可塑性とは

毎日練習することで、ピアノが弾けるようになったり、前屈が深くなったりするように、脳の働きも毎日練習することで新しい回路ができてくる。これをNeuroplasticity(神経可塑性)と言って、この言葉も今、結構ホットな言葉です。Plasticityはプラスチックと同じ語源で、つまりプラスチックがグニャグニャ形を変えられるように、脳神経も変化できるということです。それは、何歳であっても可能だそうです。

評価や判断をしない

ただ、上達した!あ~まだまだダメだ。などと思ってしまうこと自体は、Judgement(評価や判断)であり、目指すのは自分のJudgementという「ふるい」を通さずに物事をあるがままに捉えることです。

瞑想をしている時だけでなく、普段の生活の中でも同じです。たとえば対人関係において、パートナーの言動にイラッと来て、口げんかになる、その前にイラッと来た最初の反応の段階で、それ気づき、自分の呼吸に意識を向ける。それによって、さらに反応の連鎖で不毛の夫婦喧嘩になるのを防ぐこともできる。それを毎日繰り返している内に、いちいち他人の言動に反応しない平穏な心を得ることができるというわけです。

マインドフルネスとは

マインドフルネスの定義は「今という瞬間に起こっている経験を、一切の評価、判断を挟まずに注意を向け、受け入れること」です。

もちろん、これは禅の瞑想に基づいていますが、それをアメリカの名門大学MITのジョン・カバットジン氏が脳科学と結びつけ、宗教色を排除してストレスを減らすための方法として、提唱したことで、爆発的な人気を得るようになりました。

MBSRはストレス軽減のみならず、欝、不安、摂食障害、癌、慢性痛、麻薬中毒等の補完治療としても効果をあげています。

MBSRは1979年に創設されて以来、世界の720以上の病院、医療施設、クリニックで提供されています。(2013年)

私は、どうもマインドフルネスという言葉が、ずっとピンと来なかったのですが、Mind-fulnessの反対がMind-wondering(心がフラフラとさまようこと/心の迷走)であるという一文を読んだと時に、ようやくスッと納得することができました。

日本人には、禅の「今ここに意識を集中する」という言葉の方が、馴染みやすいかもしれません。

心はタイムトラベラー

人は起きている時の50%の時間は、現在自分が経験していることとは関係のないことを考えているそうです。たとえば心のタイム・トラベル。過去のことを思い出していたり、未来のことを心配してみたりして、今ココに心はなく、さまよう心。

セミナーの中では、「人は現在をまたいで、片足を未来に、片足を過去に置いて、そこに放尿している。」などと、かなりアメリカンな説明をしていましたが、このイメージは強烈で心に残りそうです(笑)。

つまりは、心の迷走に気づき、自分の呼吸を利用して今に心を引き戻すことが「瞑想」、マインドフルネスの始まりだと自分の中では理解しました。