ヨガセラピーの普及のために

いままで協会に多くの医療者の方々が賛同と応援をくださってきたことを本当に有難く感じてきました。しかし私がヨガセラピーの普及に取り組む中でわかってきたことは、「ヨガセラピーを医療者の方々にお伝えするには、ヨガだけを深く学んだだけでは難い」ということでした。

医療者がヨガに見い出す価値基準を知る必要性

世の中にはたくさんの健康法があります。どれも「良い」と言われ、その根拠を、その道の達人は伝えようという想いで行動しています。

しかし、最終的にそれを楽しい、自分に合っていると感じ、始め、続けるのは他でもない「人」です。その「人」がどんな意思決定をするのかを考えなくてはなりません。

医療者の方々にお伝えしたヨガに興味をおもちいただき、なんらかの形で取り入れていただけるようになるには、まず医療者がどういう価値基準でヨガを判断するのか、ヨガの価値をどこに見出してくださるのかを考えなくてはなりません。

そのためには、患者さんや社会健康医学に関することも合わせて学んでいく必要があると思い、京都大学医学部の社会健康医学系大学院博士後期課程への入学を決めました。京都大学の魅力の一つは、異なる学問分野の垣根を超えていろんな学問領域がつながっている点です 。

今後、「公衆衛生」という分野を学びつつ、学んだことを、この場でシェアさせていただきたいと思いますが、専門的な領域の全てを理解する必要はなく、これからの活動に役立つヒントを見つけて行っていただけると幸いです。

患者の人生の目標達成に耳を傾ける

今回ご紹介するのは、PX(ペイシェント・エクスペリエンス)という概念です。 PX(ペイシェント・エクスペリエンス)は、患者中心の医療を実現するためにイギリスで生まれた考え方です。日本語では「患者経験価値」と訳されます。 PXは、「患者が医療サービスを受ける中で経験するすべての事象」と定義できます。 《同協会ホームページより》

PXとは、結果よりもその過程や経験を大切にする医療における態度のことです。患者の価値観を反映した患者中心の医療を実現するために生まれた考え方で、病気の根治のみを目的とせず、退院後の患者のQOLを高めることまでを目的としています。従って、患者が来院した目的や患者自身のゴールにとって必要であれば、患者が望まない治療を理解することも大切とされます。

PXを重視することは患者の主張や要求を何でも聞き入れるということではありません。むしろ、患者の人生の目標達成にまず耳を傾け、それを長期的な視点で支え伴走していく役割を担う、という意味においてヨガセラピストにとって理解していただきたい概念となります。

患者の語りに耳を傾ける医療の取り組みとして次のような活動も始まっています。

ディペックス・ジャパン
https://www.dipex-j.org/about/about_katsudo

文:岡部朋子(社)ヨガメディカル協会理事