今回は、自己効力感についてのお話です。公衆衛生大学院では、人々の健康づくりについても学びます。

私たちの健康は、社会的な状況(孤独かどうか、どんな仕事をしているか、どんな生活習慣か)や、社会環境(国の政策や文化、所得格差や景気はどうか)などの影響を大いに受けます。これら影響を与えるものを「健康の社会的決定要因」と呼びます。こんなに様々な要素があるのか、というほどたくさんあります。
今回、ヨガセラピストを志す皆様にご紹介したいのは、自己効力感というものが健康に及ぼす影響についてです。

ヨガを始める方の多くが、自分は体が硬いから大丈夫かなという気持ちでいらしていますが、協会のセラピストの皆さんは、ポーズが美しく取れたかや教科書通りにできたかどうかではなく、気持ちよかった、自分も楽しめた、ということを参加者さんに感じていただけることを大切にされていると思います。

自己効力感を提唱したのが、バンデューラ先生ですが、先生がおっしゃる自己肯定感を高める4つの方法についてヨガセラピーでできることを考えてみましょう。

(1) 直接的達成経験
つまり、自分自身の経験を通じて、できた、気持ちよかった、と感じることです。ですので、お手本通りにではなく、参加された方ができることを一緒の目線で探すこと

(2) 代理経験
身近な人や、本や映画の主人公がやったことを見て、自分でもできるかも、と思うことです。

(3) 言語的説得
「自分ならできる」「あなたならできる」とポジティブな言葉を何度も言い聞かせることを、「言語的説得」といいます。

(4) 生理的・情動的喚起
やってみた結果、気持ちよかった、と実感することです。そのためにも呼吸を大切にしましょう。

ただ、(3)についてですが、セラピストの皆さんにいつもお伝えしているように、ヨガではできないことをできる、とは言いません。アファメーションと言って、今起きていること、感じていることをそこに評価判断を加えずお伝えしているかと思います。

できたからすごいですね、と言い過ぎてしまうと、できない人は、或いはできなかった人は、自分はダメなのか、と思ってしまいます。さじ加減が難しいですね。でも、単純に人は褒めてもらうと嬉しいものです。励ましているようで「もっと頑張ればできるはず!」は伸び盛りの子供たちはともかく、言われるとちょっと辛い言葉かもしれません。

どんな人もそれぞれの事情の中で頑張っています。他の人にはわからないところで、それぞれの事情があると思います。表からは頑張っていないように見えるかもしれませんが、その人なりにまずは生きているだけで十分頑張っていることなのだと思います。頑張れ頑張れではなく「よくやってますよ」「一緒にヨガをしてくれて嬉しいです」「あなたがいてくれて嬉しい」というメッセージが励ましになるのかなと思います。

ヨガセラピストの皆さん、ヨガセラピーは(4) つまり自分の体で気持ちよさを実感しやすいものです。何よりプラクティスベイスドメディスンですから、(1) 自分自身が体験できる場が大切です。そして、これまでヨガは無縁だと思っていた人たちにも、自分にもできるかもしれない、と思える様々な年齢、年代を巻き込んでいくことが大切だと思います。