ヨガでは呼吸法のことを「プラーナヤーマ」と呼びます。プラーナヤーマの語源は、サンスクリット語で「プラーナ」は「生命エネルギー」を意味し、「ヤーマ」は、「拡張、延長、伸ばす」を意味します。ヨガでは何千年も前に呼吸を意識的にコント―ロルすることの利点を発見しました。呼吸を伴わないヨガは、ヨガではなく、ただのストレッチになってしまいます。ヨガをしながら、意識的に呼吸を行いましょう。私がクラスの中で毎回お伝えする言葉の一つが「呼吸が動きを誘導していきます。」です。

呼吸は生まれた瞬間から死の瞬間まで、私たちと共にあります。一日に2万~3万回の呼吸をしているのに、私たちはほとんど、それに気づいていません。

3つの呼吸とヨガ

以前にも一度書きましたが、昭和大学名誉教授で呼吸生理学がご専門の本間生夫先生は、呼吸を三種類に分類しています。

①脳幹(生命活動を支える最も原始的な呼吸、代謝性呼吸)

②大脳皮質(意識的な呼吸、随意呼吸)

③扁桃体(感情を司る、昭和大学名誉教授の本間生夫先生は、これを情動呼吸 Emotional Breathingと名付けました)。

③の情動呼吸は、感情に左右されるので非常に乱れやすい呼吸です。情動呼吸をコントロールする偏桃体(この名前の由来は、扁桃体がアーモンドのような形をしているところから来ています。アーモンドの和名は扁桃です。)は感情と深く結びついています。そのために、不安に襲われたり、緊張すると人の呼吸は浅くなります。

しかしながら、人間は唯一、自らの意思で呼吸をコントロールができる(②の随意呼吸ができる)動物であり、呼吸を利用して感情をコントロールし理性的な状態に保つことが可能です。

一方、生物が生命維持のために行う①の代謝性呼吸は意思とは関係なく起こります。(不随意意呼吸)。目が覚めていても眠っている間も無意識に行っている呼吸です。しかし、自動的に行っているということが、必ずしも最適に行っているということになりません。実際、多くの人は正しく呼吸をしていません。きちんと呼吸ができていないと、ストレスが増し、ストレスが増すと、呼吸が浅くなり、不安感が増すという負のスパイラルとなります。

ゆっくり動きゆったり呼吸する理由

ゆっくりとした動きとともに、ゆったりとした呼吸を行うことで、今、自分は不安や恐怖を感じる必要のない(ドキドキゼーゼーしながら逃げる必要がない)安心で安全な場所にいるというメッセージを脳に伝えることで、副交感神経が優位になり拍動は減り、血圧は下がり、体はリラックスし、心は穏やかになっていくという好循環が起こります。