疲れやすい人と疲れにくい人は何が違う
疲れやすい人と疲れにくい人の違いとは、いったい何の差なのでしょう。
体力の差?気力の違い?
一概に、それらの差だけとは言えないようです。DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という言葉をご存知でしょうか。脳のアイドリング状態のことを言います。人は体を横たえて休んでいたとしても、脳は勝手に彷徨い、働き続けているということが近年の研究で明らかになってきています。
記憶の整理や閃きをもたらせてくれるという面では必要不可欠なDMNですが、過剰に働かせてしまうと、悪影響を及ぼすのです。大して体は使っていないのに、やたら疲れたという経験、皆さんにもありませんか?
この理由は、DMNが脳の総エネルギーの6~8割を占める浪費家だからなのです。うつ病の方が、どんなに体を休めても疲れが取れないのは、このDMNが関係していると考えられています。
さまよい続ける脳
ではどんな時が過剰なDMNの状態なのでしょうか。
手元で仕事をしながらもそこに集中せず、この次にしなくてはいけない作業のことや、さらにその先のことで頭をいっぱいにしている状態。また、横たわりながらもボーっと過去のことを思い返してはああでもないこうでもないと心の中で反芻したり、移動中の電車の中などで、先のことをあれこれと想定したり考えたり妄想を膨らませたり・・・。つまりは脳が働き続け、連想ゲームのように果てしなく考えが連なっていく状態です。
このDMN、ずっとONにしていたらかなりのエネルギーを消費してしまいます。じっと椅子に腰かけて仕事していたとしても、くたくたに疲れるというのはこのDMNを使いすぎたためと考えられます。
脳の休息
じっとしていても、身体を横たえていても、休まることなく彷徨い続ける脳。
そんな脳は、いったいどのような状態にすれば休ませることができるのでしょう。
それは何かに集中している時です。きっと皆さんが既に経験していることだと思います。
例えば・・・
料理をする際、野菜の千切りに集中している時。たまの大掃除、窓をピカピカにしようと一心に磨いている時。編み物や、折り紙、絵を描く、写経など、手先で何かを作り上げようとしている時。ウォーキング、ランニングをしている時、一心不乱にスポーツに打ち込んでいる時、などなど。
このようなことをした後に、妙にスッキリしたという経験はありませんか?不思議ですね。良く考えてみてください。これらは、きっとじっと座って仕事をしている時よりも、はるかに体は動かしているはずです。おそらく筋肉には疲労物質は溜まっていることでしょう。でも、何故かすっきりしたという感覚が得られる。
その理由は、脳にあります。一点に集中することでDMNをoffにして脳を休ませることができたからなのです。脳の疲労が回復したからスッキリした、ということになります。
人よりもタフで、疲れ知らずの方は、おそらく無意識に趣味などでこのような時間を多く持っている方、集中が上手な方が多いのではないでしょうか。
先ほども触れましたが、うつ病やパニック障害が増えている一因にこのDMNが関連していると言われています。現代は、ネット社会、情報社会であり、仕事中でもプライベートでもPCやスマホを開けば常に様々な情報が、目に、耳に、休むことなく入ってきます。
私たちは、「仕事を休む」ということは定期的に行いますが、「脳を休める」ということはほぼできていないのです。
では、どうしたら脳を休ませることができ、疲れにくい体を手に入れることができるのでしょう。
何かに集中すればよい。いえ、集中という状態は残念ながらすぐに手に入るものではありません。先ほどは、誰もが経験したことのあるものだと書いたばかりですが、その状態を自ら作り出そうとするのは、また別の話。
脳には、放浪癖がある
集中しようとすればするほど、考え癖のついた脳は、意思とは裏腹に勝手に考え事を始め、彷徨ってしまうものです。だからこそ、最近では「マインドフルネス」という概念が注目を浴びているのです。Google社が社員研修に取り入れて有名になったあの「マインドフルネス」です。
「マインドフルネス」とは、「今、ここ」に意識を向けて集中する心理的過程のことを言います。練習で身に着けることが可能であり、その手法は多岐に渡りますが、実はヨガそのものがマインドフルネスなのです。ヨガがメンタルに良い影響をもたらすと言われている所以はそのためです。
しかし、エクササイズ的なヨガをただただ行っても、あまりマインドフルネスにはなりません。きちんと、今ここに意識を向けられるようなヨガクラスであることがポイントです。
なぜヨガが、脳の放浪癖を止めるのか
また、じっと座って瞑想をすればよいと思う方もいるかもしれませんが、ただでさえ脳が彷徨ってしまう状態からスタートするにはかなりハードルが高いと言えます。だからこそ、単純な動きをゆっくり丁寧に延々と繰り返したり、それに集中することで瞑想のようなマインドフルネスな状態に持っていくことができる。それがヨガ。つまりヨガは動く瞑想なのです。
ヨガで、集中やマインドフルネスを体得したら、それは日常生活にも落とし込むことも可能です。もし、忙しくてヨガをする時間が取れなくとも、朝の紅茶をマインドフルネスで飲む、駅までの道を足元に集中して歩く、歯磨きを手元に意識を向けて丁寧に行う、食器を洗う手を丁寧に動かす、などなど。
その瞬間、そのことだけに集中するのです。このように、日常の動作すべてにおいて、マインドフルネスは応用が可能です。そして、そのような時間を1日に数分でも持つことができたなら脳が休まりリフレッシュでき、次への活力となるのです。
疲れやすいなぁ、寝ても疲れが取れないなぁとお悩みの方、疲れ知らずになりたい方、同じ24時間を有効に使いたい方は、是非ともマインドフルネスなヨガで脳の休息の練習をしてみませんか。
日本ヨガメディカル協会では、マインドフルネスに特化したヨガプログラムを提供しています。マインドフルネスを知らない方、ヨガをやったことのない方でも、簡単に取り組み、自然とマインドフルネスな状態になれるよう工夫を凝らした8週間プログラムです。
ご興味のある方はまずドロップインで体験してみてください。プログラム詳細と、ドロップインの申込先はこちらから。「マインドフルネス・ヨガセラピープログラム」
文責:石井及子