“Use it, or lose it.「使わなければ失われる。」私のアラ70のヨガのお師匠Kat先生の好きな言葉です。筋肉だけでなく脳も同じことが言えます。

最近、アメリカのヨガのワークショップでも、よく耳にするのが「脳の可塑性」Brain Plasticityとうい言葉です。可塑性と聞くとなんだか難しいですが、英語のPlasticityという言葉から想像を膨らませると、よりわかりやすいかもしれません。

Plasticity(可塑性、成形力、適応性、柔軟さ)は、実はPlastic (プラスチック)の語源です。プラスティックを聞くと、なんだか固い物質というイメージがしてしまいますが、色々な形に変化するのも、プラスティックです。リサイクルでまったく新しい物に生まれ変わったりもします。脳にも同じ可能性があります。

脳の神経細胞は一度死んでしまうと再生不能と以前は考えられていましたが、最近の脳科学の研究で、リハビリ(運動療法)によって、死んでしまった脳の神経細胞の周辺に、新たな神経回路ができたり、神経細胞間のシナプス伝達の効率が変化したり、シナプスが新生し、失われた機能をある程度は取り戻すことができることがわかってきました。

そして、今、運動療法として、アメリカで最も注目を集めているのがセラピーとしてのヨガです。

特に近年では、ヨガの運動的側面のみでなく呼吸と瞑想の要素が運動神経科学者たちの関心を集めています。2000年までは、ヨガに関するリサーチは年間50を上回ることはありませんでしたが、現在では500以上ものリサーチが行われ、多くのリサーチで脳の構造と機能に対する効果が実証されています。

有酸素運動は血液と酸素を脳細胞に送り、脳細胞を健康に保つとともにニューロンの成長を刺激することは長年知られています。

しかし、ウェイン州立大学老年学研究所のジェシカ・ダモワゾー博士が共同執筆した最近の研究レビューでは、数か月のヨガの練習の後、有酸素運動で見られたのと同じ効果が脳に見られたとしています。

ヨガの経験のない人に週1回以上のヨガを10〜24週間参加してもらい、ヨガ前とヨガ後の脳の健康状態を比較したところ、記憶を処理し、通常は年齢とともに縮小する脳の海馬のサイズが増加していました。

脳の海馬は、通常は年齢とともに縮小する部分であり、また認知症とアルツハイマー病で最初に影響を受ける部分です。

また感情を司ったり、計画したり、意思決定をしたり、適切なオプションを選択する役割を担う、扁桃体の変化も指摘しています。ヨガによってストレスホルモンのコルチゾールのレベルも低下していました。

「ヨガは有酸素運動ではないので、これらの脳の変化につながる他のメカニズムが存在しているに違いないと研究者は言っています。これらを証明するには、さらなる大規模な介入研究が待たれます。

参照資料:
Yoga Strengthens Brain and Body by Wayne State University
Yoga Effects on Brain Health: A Systematic Review of the Current Literature by NCBI

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筆者

ホーバン村松由美子

米・ニュージャージー州在住。1982年ハタヨガに出会う。1986年に渡米。RYT500 & Prenatal (マタニティー) & シニアヨガインストラクター。米にてInternational Association of Yoga Therapists 取得中。「セラピーとしてのヨガ」がライフワーク