経営コンサルティング会社Joy & Value(ジョイ・アンド・バリュー)の社長である大江功次氏が去年新たに立ち上げた「株式会社ととのえ」からのお誘いを受け、ヨガメディカル協会は社員のQOL(生活の質)の向上のためのプログラムのひとつとして、ヨガセラピーをご提案させていただくことになりました。

そもそもクライアント企業の業績向上を第一に考える経営コンサルの大江社長が、なぜヨガセラピーにご興味をもたれたのかをうかがいました。

まず働く方々の「身」と「心」をととのえることが大切

Q.経営コンサルの大江さんが新たに「ととのえ」を起業されたのはなぜですか?

コンサルティングの場で、クライアント企業の多くの社員の方々が疲弊していることに気づきました。若手の30代の社員でさえ会議中に机にもたれかかったりと体力、気力ともに減退している様子を何度も目の当たりにしました。

そこで、コンサルティングに入る前にまず心身のコンディションを整えようということで少し体を動かしてもらったところ、大変集中力があがるとともに場が和みました。そのような経験から、職場という「場」をととのえ、成果につなげるには、まず働く方々の「身」と「心」をととのえることが大切なのではないかと。この原体験がきっかけです。

Q.「ととのえ」のプログラムのひとつとして協会を選んでいただいた理由をお聞かせいただけますか?

企業向けのヨガセラピー動画の撮影風景

ヨガは、私自身も少し体験したことがあったため取りいれたいとは思ったのですが、ととのえのプログラムは、企業へのご提案をさせていただく立場上、老若男女、働く様々な方々に受け入れられるものでなければなりません。そのようなヨガを探していたところ、日本ヨガメディカル協会さんに出会いました。協会の社会的弱者に寄り添うという方針にも共感しました。

Q.ありがとうございます。先日、大江さんには、実際にヨガセラピーを体験していただきましたが、その感想をお聞かせいただけますか?

誰にとってもやり易い、受け入れ易い、と感じました。ヨガのポーズはやってみると難しく、途中で挫折してしまうことがあるのですが、無理な姿勢やポーズはなく、自然に無理なく身体を動かすことが出来ました。また少し身体を動かすだけなのですが、身体が緩むと同時に、気持ちが晴れてくる、前向きになれるのが特長だと思いました。

働く人、一人ひとりのコンディショニング

Q.経営コンサルティングの一部として、体と心のアプローチを導入してもらう上での困難が、もしあったら教えてください。

まだ日本において、ビジネスで高い成果を生み出すためには、働く人、一人ひとりのコンディショニングが必要なのだ、という考え方が浸透しているとは言えないと思います。特に「休息」を取ることの重要性が伝わっていないように思います。経営に携わる立場の方々が、新しい働き方を積極的に発信する、率先して手本を示していくことが大切だと思います。

Q.ととのえ“MCNI”メソッドについて簡単にご説明いただけますか?

撮影後、スタジオでインタビュー

Measure(測る)、Care(労る)、Nurture(育む)、Improve(改善する)の4つのステップの頭文字を取って、MCNIメソッドと呼んでいます。身体、心、組織(場)の状態を測定し、見える状態にする。その上で、まず身体、心をケアしてダメージを回復する。その上で、組織(場)における働く方々の関係性を育みながら、心理的安全な場を作り上げ、共通の目的・目標、考え方やメソッドのもと、改善をチームで行う、という組織全体の変革プロセスを示しています。従来型の組織開発では、N(育む)の一部と、I(改善する)に焦点が当たっていたのですが、Measure(測る)とCare(労う)の重要性が今後増していくと思います。

Q.「ととのえ」の提供しようとしているコンテンツの中の「メンタルモデルからの脱却」とは、どんなことですか?

メンタルモデルとは、元々心理学用語で、個々人が世の中をどう捉えているのか、という個々人の経験に基づく認知のあり方を指しています。固定概念と捉えて頂いて差し当たりないと思います。この経験や経験に基づくものの見方が、功を奏する場面もありますが、ときに、新たな発想や想像、創造の妨げになることが起こり得ます。自分自身が経験に基づくメンタルモデルを持っていることを自覚し、自分の経験や考えだけに固執することなく、他人の話をもっと寛容的に聞き入れ、相手の良い点を互いに取り入れるような考え方をすることが出来るようになれば、もっとビジネスでも簡単に良い成果を得られるようになると思います。

ヨガは現代の働く人が抱える課題解決の有効な手段

Q.現在アメリカでは、お医者さんも積極的に健康のためにヨガをすることを薦めるようになってきていますし、協会が提案するような誰にでもできる、体をととのえるためのヨガも社会に少しずつですが浸透してきています。でも、日本では、まだヨガというと若いモデル体型の女性が、アクロバットのようなポーズを取って入るイメージが強く、多くの男性は敷居が高いと感じていると思います。大江さん、ヨガ一押しの経営コンサルというお立場から、男性にも体をととのえるためのヨガを受け入れてもらうには、何が必要だと思われますか?

まず第一に、簡単にヨガを体験出来る機会を増やしていくのが良いのではないかと思います。実際にヨガを始めようと思っても、ヨガに対する固定概念があって、なかなか動き出すことが出来ません。例えば、ヨガスタジオに申し込まなければいけない・・、ヨガウェアを買わなければいけない、ポーズが出来なかったら・・という不安など。

実際に行ってみても、やっぱり身体が固くてポーズが取れず、無力感だけが残った、身体が痛くなっただけで効果が実感できなかったなど。一事例にしか過ぎませんが、実際に先輩経営者であるとある企業の社長も、「社内向けに取り入れたんだけど、ポーズ取れなくて無理したら身体を痛めちゃったよ」とおっしゃっていました。実は気軽に職場でも着替えも何もせずに実施出来、教科書に載っているようなポーズが取れなくても、呼吸やちょっとした動作の応用で効果を感じられるのだという事を伝えていく必要があると思います。

第二に、ヨガそのものを広めるのではなく、働く人が抱える課題にヨガが効果的なのだ、という事を広めていくことが大切だと思います。例えば、睡眠に効果的である事を伝えていくことも重要だと思います。男性に限らず働く多くの方々が、睡眠の質に困っていらっしゃいます。私自身も定期的に就寝前に睡眠を誘導するヨガに参加していますが、明らかに眠りに着くまでの時間も早まりますし、寝ている間の質も高まっています。

(客観的データあり)もちろん、ヨガだけではなく、お風呂に入る時間や温度、スマホをいじらないなどその他の工夫も同時に行っていますが、ヨガの効果があるのは疑いの余地がないと思います。こうした形で現代の働く人が抱える課題解決の有効な手段として認識されていけば、結果としてヨガが広まり、ヨガの本質である心の平安が世の中に広まっていくのではないかと考えます。


【編集後記】

経営コンサルとヨガが最初は結びつかなかったのですが、現在、企業で「働く人が抱える課題」として、一人ひとりのコンディショニング、休息をとることの重要性、固定概念からの脱却があることをおうかがいし、正にそれは「体をととのえ」「心をととのえ」「呼吸をととのえる」の三つを柱とする『ヨガセラピー』にできることだと気づきました。

そして、大江さんが新しく立ち上げたプロジェクトの名前が「ととのえ」!今後の「ととのえ」の発展が楽しみであるとともに、ヨガセラピーの広がりへの期待もふくらみました。

取材・文=ホーバン村松由美子