Larry Payne, Ph.D.
国際ヨガセラピスト協会IAYT創立者
日本ヨガメディカル協会、新ポータルサイトyogatherapy.co.jpの初インタビューに快く応じてくれたのは、米国ヨガ・セラピーの父と称されるラリー・ペイン氏。
1989年にアメリカで創立されて以来、セラピーとしてのヨガの研究と教育を支え、50ヶ国以上の国で働く5,600人以上のヨガセラピストを輩出してきた世界的な組織である国際ヨガセラピスト協会IAYT (本校、日本ヨガメディカル協会の講座の一部は日本で初めてIAYTの認可を受けています。)の創立エピソードとヨガセラピーの発展と展望について語っていただきました。(次回4月はIAYTの共同創立者であるリチャード・ミラー氏も登場します。)
国際ヨガセラピスト協会(IAYT)創立時会長
UCLA医学学校のヨガのカリキュラム共同創立者
Loyola Maymount大学ヨガセラピー認定プログラム設立ディレクター
Prime of Life Yoga創立者
米国ヨガセラピー創立の父であり、国際的に認められた腰痛のスペシャリスト。ロサンジェルス・タイムス紙はラリー氏はアメリカで最も尊敬されるヨガ・ティーチャーの一人であると紹介。ニューヨーク・タイムス紙を含む新聞、雑誌取材多数、テレビ、ラジオにもゲストとして頻繁に出演。
1979年、ラリー・ペイン氏(Larry Payne, Ph.D.)は広告会社の管理職として働いていましたが、慢性の腰痛とストレスに悩まされていました。腰痛緩和のための探求が彼を11ヶ国を巡ってのヨガと健康について学ぶ旅へと導き、最終的にインドにてヨガの認定を受け1980年に、ロサンジェルスでSamata Yoga Centerを設立しました。
現在、カリフォルニア・ロサンジェルスに住み、セレブが多く住むことで知られているリナデルレイやマリブで活躍の場を広げています。世界中で講演やワークショップの他、ヨガや健康に関するセミナーを行っています。
書籍/DVD
「Yoga Therapy Rx, for Dummies」
「Yoga Therapy Rx」DVD シリーズ
― なぜ、IAYT国際セラピスト協会を創立されたのですか?IAYTを始めた時は、どんな未来とゴールを心に描いていましたか?
初めてインドを旅した時に出会ったヨガ・セラピー・センターにインスピレーションを得ました。その頃、ヨガセラピーという分野は、まだアメリカでは黎明期でした。私はT. K. V. デスィカチャー(現代ヨガの父と言われているティルマライ・クリシュナマチャーリヤの息子。それぞれの人のそれぞれの病気や痛みや年齢に対処するためのヨガを広めた。)の元で学んでいる間、 同宿だったリチャード・ミラー(Dr. Richard Miller)に(アメリカでの)ヨガセラピー協会設立について発案しました。
すると、彼は専門分野として発展させるためには定期刊行物が必要だろうと発案、リチャードが定期刊行物の編集者になるのであれば、私が協会は切り盛りするということになったのです。そして私がIAYTの会長と定期刊行物の出版者となり、リチャード・ミラー氏が他のすべての記事の編集者と企画担当になりました。私たちの未来像は、アメリカにおけるヨガセラピーのステータを上げ、一目置かれる分野となることでした。
― IAYTを設立後、どんな困難がありましたか?それをどうやって乗り切りましたか?
新しい組織を始めるにあたっては常に経済的な困難は付きものです。私の良き友である弁護士のスティーブ・オストロー氏(Steve Ostrow)が、非営利組織にするための法的な手続きを無償で手伝ってくれました。建築家として又ヨギーとして成功し「ハードハット・ヨギ(ヘルメット・ヨギ)」の別称で知られていた故クロード・クック氏(Claude Cooke)は、私たちの最初の後援者でした。彼は私たちの初刊「体と息と心のためのヨガ」(Rudra出版社との共同発行)のスポンサーにもなってくれました。
― IAYTを設立して以来、ヨガセラピー界はどのように変化しましたか?ラリー先生が思い描いたような変化がありましたか?
私が夢見た以上の変化がありました。ヨガセラピーはアメリカでは広く認知されましたし、現在、IAYTは30ヶ国以上にあります。すばらしい会長やディレクターも得ました。マシュー・テーラー氏(Matther Taylor Ph.D)は、オンライン・サポートの先駆者です。
ジョン・ケンパー氏(John Kepner)が多くのアユルベータ協会との橋渡しをしてくれたおかげで協会の幅が広がりました。また氏は協会の経済的な安定にも寄与してくれました。ディリップ・サーカー氏(Dilip Sarkar)は現インドの首相ナレンドラ・ダモダルダス・モディ氏とのつながりも含め、私たちの最良の外交大使となってくれています。
― 私がプリンストンで参加させていただいた先生のPrime of Life Yogaのワークショップでは、ほとんどの参加者が50代以上のインストラクターや医療関係の方々だったことに驚いたのですが、他のクラスも同じですか?
Prime of Life Yogaのコースは、50代以上の人のためにデザインされています。アメリカだけでも50代以上の人は1億2千万人もいます。最近の研究によると、アメリカにおいて10年間に2万9千人の50代以上の人が、間違ったヨガのクラスに参加して 救急医療のお世話になったということです。
現在、ほとんどの一般向けヨガクラスは、なんらかのフローヨガです。それから、いきなりレベルが下がって椅子ヨガ、リストラティブヨガのクラスがありますが、その中間レベルのヨガのクラスが全くありません。
50才プラスの人口は世界的に重要な年代であり、このことはヨガセラピーにとっては追い風です。安全にできるヨガが必要です。ヨガの恩恵を受けるのに、難しいポーズをする必要はないのです。
― 日本ヨガメディカル協会のミッションは医療現場にヨガを取り入れてもらうことです。医療機関と連携するために、協会は、あえてホリスティックというアプローチとは一線を画しています。ラリー先生の学校では、アユルベーダよりも西洋医療の勉強に力を入れているとうかがい、日本ヨガメディカルと同じ姿勢だと思ったのですが、その理解は正しいでしょうか?
そうです。アメリカでも日本でも、医療機関、整骨院、整体、理学療法センターなどと比べてアーユルヴェーダのセンターはいくつあるかを考えてみてください。私は私の学校の卒業生が就職できるようにしたいのです。
卒業生がSOAPノート(医療機関で使われる問題志向型記録の叙述的経過記録方式)などを学び、医療関係者と同じ言葉を使ってコミュニケーションが取れる必要があります。アーユルヴェーダは優れた方法として触れはしますが、私たちのフォーカスではありません。
― アメリカではヨガセラピストを見つけたい人は、どのように探しているのでしょうか?
国際ヨガセラピスト協会(IAYT)が、一番の情報源です。また私のホームページSamata.comには、私たちのLMUのプログラムYT RXの卒業生達の名前を掲載しています。
― ラリー先生のヨガセラピーを受けた方で、症状が改善した記憶に残るケースを教えてください。
かなり重度の脊柱後弯症(背中が、極度に丸くなる症状)の高齢の女性は、ヨガセラピーを受けた後は、ほとんど背中が真っ直ぐな状態になりました。彼女は「初めてヨガセラピーを受けた時は?(クエスチョン・マーク)で疑いを持って来たが、帰る時には!驚きマークでした。」と言ってくれました。
― ヨガセラピーで恩恵を受けることのできる人はどんな人ですか?
どんな理由であれグループレッスンを受けることのできない人たちです。
― ラリー先生の今の目標は何ですか?
大学で13年間教え続けていますが、今後もそれを続けていくことと、Prime of Life Yogaのトレーニングをオンライン・コースを通して多くの人に知ってもらうことです。
― ラリー先生にとってヨガとは何ですか?
ヨガは私にとって、生き方であり、他の人々と慈愛と慈悲でつなげてくれています。
― ヨガセラピーに、できることと、できないことは何ですか?
呼吸さえできればヨガセラピーはできます。末期の病を治すことはできませんが、体や精神的な痛みを和らげる助けはできます。
― 腰痛や肩の痛みや健康のために誰でも毎日行うことのできるポーズやシークエンス(連続したポーズ)を教えていただくことはできますか?
ヨガセラピーについてより深く知ると、このような質問は適切ではないとわかってきます。なぜなら、ヨガセラピーの根本理念は体のある部分の痛みや病気に対処することではなく、一人ひとりの人の精神、感情、生活習慣、呼吸、姿勢など全てにおける健康増進をサポートをすることだからです。
でも、質問にあえて答えるなら、シャバーサナ(おやすみのポーズ/死体のポーズ)です。80%以上の病気はストレスから来ており、ヨガから得られる最大の恩恵はストレスを減らすことだからです。
― 最後に、日本でこれからヨガセラピストになろうと思っている人たちへの励ましの言葉をいただけますか。
あなたたちは、この分野おける草分け的存在です。ヨガセラピーが現在アメリカで主流となってきているように、日本でもますます主流となって行くことでしょう。
Interviewed & translated by 村松ホーバン由美子