YMSJ認定ヨガセラピストさんたちのZoomお茶会に参加された宮野純子さんの精神科でのヨガセラピーの実践の話がとても興味深かったので、さらに詳しいお話をうかがいました。

宮野純子さんのプロフィール

 

YMSJ認定ヨガセラピスト

活動拠点:宮城県仙台市
・スポーツクラブ
・カルチャー教室
・企業ヨガ
・介護施設デイケア椅子ヨガ
・精神科クリニックでデイケアヨガ

精神科で教えることになった経緯は?

ある時、新聞記事で見つけたNPO法人仙台グリーフケア研究会主催の講座麗澤大学名誉教授 水野治太郎先生の「ナラティブによるスピリチュアルケア」に参加。当時の私はこの講話に参加して心が揺さぶられ、涙が止まらなくなりました。特に「10分かけてピーナッツ最中を食べる」ワーク。今思えばマインドフルネスの時間でした。

その後も、同法人主催の講座に参加を続けていたところ、ボランティアスタッフをやってみないかと声をかけて頂き、各講座の開催準備や大切な人を亡くした方が思いを語れる場所「わかちあいの会」等に携わることになりました。

この「わかちあいの会」では、参加者がお帰りになる(日常の時間に戻る)前に一息つく「お茶会」という時間を設けていました。が、コロナ禍で状況が変わり「お茶会」は中止に。代わりに「ヨガと呼吸」を行うことを提案したところ「やってみよう」ということになり、数か月続けてみました。

アンケートをとってみたところ「何となく気持ちが落ち着いた、呼吸が出来ていなかったことに気付いた、身体が暖かくなってホッとした、この呼吸法が楽しみになりそう」等、参加者・スタッフ共に嬉しい反応があり、暫く続けていくことになりました。

そのような状況下、そのNPO法人の理事長が『せんだいG&Aクリニック』(仙台市)を開業することになり、クリニックで行うデイケアプログラムに「ヨガと呼吸」の時間を設けたいので協力してほしいとお声掛け頂き、2022年4月からスタート、現在に至ります。

精神科での活動内容は?

医師も看護師もスタッフの方々も私も、デイケアヨガは初めてのことでしたので、当初は特に細かく担当看護師さんと連絡を取り合い、体を動かすにあたり、患者様の怪我や現在のお身体の状況など可能な範囲で教えて頂きました。

その症状について調べるなど今でも出来る限りの事前準備は行っております。ですが当初は、調べすぎて不安と緊張が高まっていくばかり。日本ヨガメディカル協会の講師の方々からも貴重なアドバイスを頂き、大変救われました。今続けていられるのも協会の皆様あっての事だと思っております。

依存症の方に対しどのようにヨガを行っている?

~デイケア「ヨガ」の流れ(毎月2回実施)~

10:00 朝のミーティング
▶ヨガ前の体の調子と心の状態(一人ずつ話す)
▶「今日は何の日?」、クイズ3問(看護師さん担当)
▶ラジオ体操第一、第二
10:30 プログラム(ヨガ)スタート
11:35 終わりのミーティング
▶ヨガ後の心と体の状態

「朝のミーティング」では、まず最初にその日の体調と心の状態を一人ひとりが話します。その時に、最近の飲酒の反省話が出たり、食べたものの話、体の痛みや体調、心がどのような状態かを話し、みんなで共有します。

その後、看護師さんが考えてきたクイズに一緒に真剣に考えて答えていきます。この時間で自然とコミュニケーションがとれて盛り上がり、緊張がほぐれていきます。ラジオ体操、トイレ休憩などをはさみ、1時間のヨガプログラムスタート。

当初、「朝のミーティング」には参加しておりませんでしたが、どのようなことを行っているのか気になっており、看護師さんにお伝えし、一度参加させていただきました。プログラムが始まる前に皆さんの体調のこと、最近のお話等を聞くことができ、私のことも知って頂ける貴重な時間だと思い、それ以降参加させて頂くことになりました。二度寝をして遅刻しそうになったことや、朝から腰痛がある時など私の体調や心の状態も皆さんにお伝えしております。

現在はマットがないので基本椅子ヨガですが、床に座ってストレッチを行うこともあります。「朝のミーティング」の皆様の状況から、呼吸の時間を長くとってみたり、すぐに体を動かすかどうかを決めて進めていきます。

まず、始まりはいつも、今の呼吸を感じてみるところからスタート。肩こり・腰痛の方が多いので上半身のストレッチを行い、脳トレ、コグニサイズ、手足指先を使ったゲーム、筋トレなど皆さんの体調に合わせて動き、集中力が途切れないように工夫しています。

精神的に落ちている方は肘が上がりにくく、嫌な事が起こった直後の方は体側の伸び・肩周りの硬さなど細かい動作に現れるので、気付かれないようにしっかり観察しております。心と体の繋がりを改めて感じる事が多いです。状況をみながらリンパマッサージを行ったり、終盤に瞑想の時間を入れております。

後半は椅子から立ち上がり下半身のストレッチ、最後はクールダウン、ボディスキャン、呼吸で変化を感じるなどを行い終了。

終了後、体のことに対して質問を頂くことも多いので、ツボ押しやほぐしの動きをその場で皆さんと行ってみたり、次回に改めて行っています。

安心できる場所、あたたかい空間、ゆるんだパンツのゴム=丁度いい心地よさを一緒に感じていけるような時間を過ごしたい、という想いでヨガを行っています。

今思えば、始めは気付かないうちに依存症の方へ様々な先入観を持ってしまい、勝手に不安を抱いておりました。皆さんはとても優しく、今では私の方が癒される場面も多々あります。

デイケア「ヨガ」がスタートして1年経った先月、先生と看護師、精神保健福祉士の方と平日の診察時間終了後、オンラインで「1年の振り返り」の時間を設けました。

その時に、スタッフの方から、「自分たちが楽しみになっている」というご感想を頂いたり、「指遊びの刺激が皆さん楽しそう」、「不調について自分で改善できる方法を教えてもらうとそれもセルフケアになり癒しに繋がっていると感じる」等ご感想を頂きました。

女性の参加者がまだいらっしゃらないので、今後も先生方と意見交換しながら工夫していきたいと思います。

協会で学んだこと、役立っていることは?

【ヨガセラピーの4つのルール】特に、ヨガは治療や施術ではないということ。続けることで自己肯定感が高まり、健康観の回復にも繋がっていくということを自身で体験しているので、焦らずに寄り添う気持ちを大切にしています。時々「HELP」になっていないか?環境づくりにおいてはどうか?など自分に問いかけながら、振り返りの時間をもつことの大切さを活動を通して強く感じています。

【課題レポートの実践(提出)と考察】課題を実践するにあたり、ヨガセラピストとして活動していくという覚悟ができました。また、先生からの深く鋭い考察は、現在の活動の中で大変役立っております。軽減法の伝え方一つにしても毎回色々と工夫しております。

【協会の参考書籍や課題図書のご案内】

【川野先生のマインドフルネス講座】始まりから終わりまで深い内容でした。今でも時々テキストを見返しておりますが、その度に勉強不足を痛感し、学びたい意欲が強くなります。

ヨガ・ヨガセラピーと出会ったきっかけは?

心身のバランスを崩し、激ヤセした状態を心配してくれた友人からヨガを勧められ、始めたのがヨガとの出会いです。ヨガを行った後は、脚がなくなった?と思うくらい下半身が軽くなり、お風呂から上がったような温かさがしばらく続き、体に血が通っている感覚を久し振りに取り戻したような気持ちになりました。

そして、ヨガインストラクターの資格を取得。その後、ネット上でヨガについて調べている時「呼吸ができればベットの上でもヨガはできる」というフレーズを見つけました。

ヨガ自体がセラピーだと感じていましたが、「ヨガセラピー」とはどういうものなのか調べていくうちに日本ヨガメディカル協会のホームページに辿り着きました。