医療とホリスティックの架け橋

アメリカでは、ヨガセラピストとして活躍する理学療法士(Physical Therapist, PT)が数多く存在します。

「運動療法」から「全人的ケア」へ

近年、アメリカの医療現場では、「身体だけを治す」ことにとどまらない、心と身体を一体として捉える“全人的ケア”の重要性が広く認識されてきました。この流れの中で、理学療法を補完・拡張するアプローチとして、ヨガセラピーが大きな注目を集めています。

事実、ヨガに関する医学研究は2010年以降急増しており、

  • 2011年には年間200本以上のヨガ関連論文がPubMedに登録、
  • 2021年には約1,324本に達しています。

研究対象も多岐にわたり、うつ病、不安障害、がん、心血管疾患、フレイル、高齢者の認知機能など、さまざまな疾患に対する補完医療としてのヨガの有効性が報告されています。

医療との連携が進むヨガセラピー

アメリカでは、がんサバイバーのサポート、慢性痛のマネジメント、術後のリハビリなどの分野で、ヨガセラピーが医療現場に積極的に導入されています。

ヨガセラピストと理学療法士がチームとして協働するケースも多く、院内でヨガセラピーを提供する病院やクリニックも年々増加しています。

ヨガセラピーを学ぶ意義

ヨガセラピーは、安心感・自己効力感・内省といった、患者の回復に不可欠な「心の土台」に働きかけるアプローチです。

ヨガセラピーの心理的側面へのアプローチ

ヨガセラピーは「身体」と「心」を切り離さず、一体として扱うのが基本です。

ヨガセラピーでは、呼吸・マインドフルなヨガの動き・感覚への気づきを通じて、自律神経のバランスを整えるとともに情動やストレス、思考パターンにも介入し自己認識(Self-awareness)や内受容感覚を高めます。これは、慢性痛・不安・トラウマなどの治療において非常に重要です。

医療従事者がヨガセラピーを学ぶことで、「より深い気づき」「より広い視点」をもって患者と向き合う力が高まると共に、患者自身の自己回復力も高まると言われています。

以下は、私がアメリカの国際ヨガセラピスト協会の認定スクールで学んでいた時の同級生の理学療法士にインタビューした記事です。https://yogatherapy.co.jp/interviews/pt.html


日本とアメリカのPT制度の違い

アメリカのPTは、大学卒業後に3年間の大学院課程を修了し、Doctor of Physical Therapy(DPT)という博士号を取得するのが基本です。
さらに、一部の州では医師の紹介なしに直接患者を診る「ダイレクトアクセス制度」が認められており、独立開業も可能です。

PTは、初期評価・治療計画・再評価などを自律的に行い、ヘルスケアチームの一員として高い専門性と裁量を発揮しています。

アメリカにおけるヨガセラピー

学位としては、少なくとも 2校 が「ヨガティーチャー/ヨガセラピー専攻」の修士課程の学位(Master’s Degrees)を正式に提供しており、両校とも学位の取得とともにC-IAYT(認定国際ヨガセラピスト)を取得します。

C-IAYTには非学位の認定トレーニングプログラムもあります。その場合、国際ヨガセラピスト協会(IAYT)指定校にて800時間の研修+100時間の臨床実習を行う必要があります。

アメリカの病院やがんセンターでは約400施設がヨガを含むウェルネスサービスを導入していると報告されています。これらの施設の中には、ヨガセラピーを明確に医療として導入している事例も多く含まれています。

IAYT(国際ヨガセラピスト協会)の会員は5,000人以上おり、その多くが(過半数)が病院やアウトドア・クリニック、リハビリテーション、オンコロジー部門などの医療現場で活動しています。

日本メディカルヨガ協会は国際ヨガセラピスト協会(IAYT)の日本唯一のメンバースクールであり、C-IAYTが二名在籍し日本における補完医療としてのヨガセラピーの普及に努めています。