Baxter Bell先生

医師、国際ヨガセラピスト協会理事会役員、鍼灸師、YACEP、E-RYT500、 ”Yoga for Healthy Aging”共著者。全米でヨガセラピーのワークショップを開催。

バクスター先生のメッセージ
以前は加齢から来る腰痛や関節炎の患者さんに西洋医学の医師として、炎症を抑える薬か冷やしたり暖めたり、理学療法に通うという処方しかできませんでした、今では、まずは、体にやさしいヨガをしてライフスタイルを変えて行くことを薦めており、その効果を実感しています。中国の故事に「人に魚を与えれば一日生かすことができるが、人に魚釣りを教えれば一生養うことができる。」という言葉があります。私は、このブログを通して、この諺の意味するところを実践して行きたいと思っています。

椅子から立ち上がろう!

昨日カフェで注文する順番を待っている間、床から12インチほど離れたカフェのカウンターのフットレストに座っていた赤ちゃんが、嬉しそうに、お母さんのズボンをつかんで立ったり座ったりする様子を眺めていました。その赤ちゃんは、それを10回以上も満面の笑顔で繰り返していました。

私は、ふと介助なしに椅子から立ち上がることさえ難しくなった何年も前にかかわった高齢の生徒さんのことを思い出し、対比せざるをえませんでした。

ヨチヨチ歩きの子供が立ったり座ったりという日常に繰り返される動作に喜びを見い出すことと、衰えとともにそれが困難になっていくこととの間には一体どんなことが起こるのだろう・・・と。

その要因は、一般的な体の弱さ、バランスに関する体制感覚(自分の体が空間においてどこにあるのか、どこで、どのぐらいの速さで動いているかを知る能力)と統合の喪失、複数の起こりうる医学的問題まで多岐にわたります。

定期的なヨガで体制感覚を改善

定期的にハタヨガを練習すれば、そもそも、このように能力が失われてしまうことを完全に回避できるかもしれません。よしんば椅子から立ち上がることが、いささか困難になってきたとしても、ヨガによって筋肉を維持し、体制感覚(自分の体が空間においてどこにあり、どこに向かって、どの位の速さで動くのかを知る体の能力)を改善することができます。そして、この毎日の欠くことのできない動作をより楽に行えるようになるでしょう。

立ち位のポーズを含むハタヨガを習慣的に行えば、体を強化するとともにストレッチすることができます。しかし、もっと重要なことは、ヨガは、非常に積極的かつ意識的に、体制感覚と呼ばれるバランスと運動感覚のための神経受容体を利用するということです。

この能力は使わないことによって衰えますが、 もしほとんど今まで座りっぱなしの生活をしてきたとしても、ヨガのポーズを練習することによって、再びスイッチが入り、鍛えることができるというのが私の理論です。それによって、座った姿勢から足の上に体重を移し、両脚で優雅に椅子から立ち上がり、人生を歩んでゆくことが容易になることでしょう。

より高齢の生徒さんの場合は、立ち上がることが難しくなるために床に横になるのを嫌います。年をとると重力から来る負担が増すので少し長くはかかりますが、上述したような理由で、ヨガをマインドフルに行うことによって、より簡単にこのような動作ができるようになるでしょう。

座位から立ち上がる動作の重要な鍵となるのが、パワフルポーズです。

【出典】Come On, Stand Up, Get Outta that Chair! Yoga for Healthy Aging
翻訳:ホーバン由美子

パワフルポーズ/椅子のポーズ

by Baxter and Nina

椅子のポーズは、立ち上がり動作をキープするために、もっとも助けとなるポーズのひとつです。 膝周りの筋肉や太ももを鍛えるので、バランスを維持するためにもお奨めのポーズです。

バランスを向上し脚力を鍛えるのに加え、背中や肩を開き、腕も強化します。後から説明するバリエーション(軽減法)で、ほとんど誰にでも、このポーズを行うことができるようになります。

DR.バクスター処方箋

椅子のポーズを処方するのは、こんな症状の時です。

  • 膝を強くする、膝蓋骨脱臼の改善
  • 疲労や虚弱による病からの回復(脚力をつける助けになります。)
  • スキーやハイキングのような負荷の高い運動の準備体操として
  • 片足立ちなどバランスの向上、バランス維持のための脚力の強化
  • 肩の可動域の向上

椅子のポーズのやり方

IN:
1.足を腰幅に開いて平行、手は腰に当てる。
2.太ももを平行に保ったまま、膝をつま先の真上か、つま先をギリギリで越すところまで曲げる。
3.踵が床から離れないように注意する。
4.腰はまっすぐに伸ばしたまま、上半身を前傾させる。
5.息を吸いながら腕を前から上に回し上げる。
6.肩周りが堅い場合は、腕は床に平行を保つ。
7.肩周りが柔らかい人は、腕を耳の真横まで上げる。
OUT:
8.腕を下げ、脚をまっすぐに伸ばす。

ポーズをキープする長さ

初心者は30秒(6~8呼吸)。1分(12~16呼吸)まで伸ばせるようにする。

軽減法&バリエーション

内ももや膝周りの筋肉(多くの人が、この部分筋肉が弱い)を強くするために、両膝の間にブロックをはさむ。ブロックの狭い部分を使う。(必要に応じて、足幅は狭くする。)

完成形のポーズを取ることが難しい場合は、膝を少しだけ曲げて、背中は床に対して垂直のままで、両手は両膝にそえます。

もしバランスがうまく取れなかったり筋力がない場合は、壁を使います。壁に背を向けてお尻を壁につけ、足は15センチ位壁から離します。太ももと膝を強化したい場合は、上記の姿勢から膝をさらに曲げます。

次に紹介するのはバクスター先生のパワフルポーズです。重要ポイントのみ動画の下に翻訳文をつけました。

  • 椅子の前方に座り、足は膝の真下ではなく、少し後ろに置く。
  • 椅子の両脇をつかんで、体を前傾。腰は自然なカーブを保つ。足に体重を移す。元の位置に戻りリラックス。
  • 腕を目の前に突き出し、息を吐きながら数センチのみお尻をあげる。一呼吸キープ。息を吸いながらお尻を落とす。
  • 手を挙げて、同様に。
  • 最後は手を頭上に挙げて、数呼吸キープ。同上。
  • ブロックを股にはさんでスクイーズ。
  • ブロックを後ろに下げることにより腿は内転する。
  • 腰に自然なカーブを保ったまま、膝を曲げる。
  • この練習では上半身は前傾させない。
  • つま先立ちになる。
  • 3~9呼吸。
  • 最後は、股のブロックは使わないが、ブロックがあるかのように同じポーズを取る。

【出典】Featured Pose: Powerful Pose (Utkatasana) 
翻訳:ホーバン由美子